RECORD

Eno.116 アリィーの記録

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*目を閉じた*


「もしも僕がこんな虫でなければ?」



「もしも僕が悪い事をしなければ?」



「もしも僕が、」



*もしもキミが* *そもそも僕と出会わなかったとして*

*その場合* *僕は今の苦しみを得る事もないのだから*
*幸福だと思う事も無い* *のかも知れない*
*それでも* *それで良かったな* *と*

*キミには申し訳ないが* *そう思ってしまう瞬間はあるよ*

*その涙を見る度* *後姿を見る度* *声を聞く度*

*嗚呼* *許されない愛されていた* *って*


「謝りたいですか?」



*それこそ許されないな* *僕も許したくないしね*

*良いかい* *これは絶対不変のお別れなのさ*
*最初から分かっていたし* *覚悟もしていたんだ*
*ま* *死ぬのが意外と怖かった* *ってところは誤算だったが*


「あいたいですか?」




*いや* *傷をまさぐるのは趣味じゃないよ*


「……まあ、その辺も自由らしいけどさ」



*彼は言った* *悪い奴じゃないんだから* *生まれ変わったらもっと*
*自由で* *強い奴になると良い* *と*
*僕は思った* *死んだ後の方が* *僕等自由だね* *って*

*キミは願った* *好きな所で咲いて* *会いたい人に会いに行け* *と*


来いと言うから、会いに来た、だっけ?」



*全く良く言うよな* *口がある分* *態と秘めるのは趣味かい?*

*伸びひとつ* *鈴は鳴らない*


「アナタの願い、叶えましょう」



*死にかけのものが* *何かを掴む事*
*とりわけ色恋沙汰と感動秘話を* *神様は好む*

*だから* *そう* *それに価値があるのだと*




*その部屋に風が吹き* *花弁は揺れている*

*いつまでも*

*どこまでも*

*向こう側まで*