RECORD

Eno.5 劉 光龍の記録

◇夜の帳

「今日は……色々ありましたね。
レヴンさんが思いの外割り切りの良い方だとは……ちょっとびっくりです」


夜も深まった宿の一室。
当たり前のように同じ部屋に『帰る』ようになった二人の姿があった。

「りーくんは人前だとああいうことはしないんですね。
いつも軽いノリなのに、変な所で紳士ですよねぇ……」


ベッドに腰掛ける。
同じように横にあなたの姿があるだろうか。



すっと息を吐いて、目を閉じる。

「どうして色恋の話がそんなに好きなのか、って……
”無かった”んです。権力中枢には。……本物の感情なんて。
全ては権力と金に塗りつぶされ、あるのはただ、欲と下心だけ」

「私はそんな場所に生まれたのに、真実の愛を欲してしまった。
本当のことが欲しかった・・・・・・・・・・・んです。
何もかもが嘘の場所で……『LOVE』は、遥か遠くにある、私の憧れ、でした」


「長く子供に恵まれなかったお父様は、私……名前が思い出せないので、天浅葱あまあさぎと定義していますが
お父様は私をとても大切にしてくださいました。そこに確かに愛は、あったと思います。
……でも私は欲深いから、願ってしまったんです。『血縁ではない他人と強い関係を構築してみたい』って」

「そこからの話は、貴方も知っての通り。
婚約者との結婚の約束を守ろうとして、帝の求婚を断り……追われる身となって……
その婚約者に殺された・・・・・・・・……ボンクラ王子のボンクラな作戦により、私の軍は……全滅した……」

「その事実を正しく認識できたのは、この体……切原 雪きりはら せつに転生してから。
……真実の愛など、無かったんです」



でも、最期まで傍にいてくれた家臣達がいた。
生き延びるための細い細い糸を、必死で手繰り寄せようとしてくれてた人達がいた。
それはきっと、本当だった。
その気持ちに、姫様と呼んでくれた言葉に、せめて後悔をして欲しくなかった。

……あれから1000年。
もう誰も覚えていなくても、あの時姫様と呼んだ人はそれなりに立派であったと……
そうであったらいいと……そうなれたらいいと……今も思っている。


「……りーくんにとって、私は……良い、姫様であれていますか?」


あなたにとって、自分が『姫様』である必要はないのだけど。
ふとそう、聞いてみたくなった。