RECORD

Eno.232 シャルティオ&キィランの記録

或る従者の記録



 楽しいな “自分”を出すことが。
 知っている、丁寧さの裏にいる本物のこと、
 フェン様に拾われる前の“俺”のこと。

 “私”でいるよりも、“俺”でいる方が長かった。
 消し去ろうとしても消せないんだよ、
 ────のことは。

 背伸びしてみた、手を伸ばしてみた。
 フェン様への忠誠は変わらないけれど。
 “私”が“俺”になる日があっても、たまには。

 楽しかったこと、記憶に鮮やかに焼き付いて。
 あぁ、やっぱり俺は、
 お上品なだけじゃァいられねェよ。

 酒場の混沌こそが居心地が良い。
 俺の本性、それなりにバレたろうが知るか。
 魔導王国にさえバレなきゃ、
 俺は暴力で殺されることはなかろうよ。

  ◇

 ……あの世界に帰りたくないのは、
 俺もシャル様もフェン様も同じで。
 みんな、この世界にいられりゃ良いのになァ。

 それでも、シャル様もフェン様も王子で、
 俺はその従者で。

 フェン様の計画の為には、
 シャル様も俺も、いずれは帰らねェと。
 難儀ったら難儀。でもフェン様の身分がなけりゃァ、
 きっとあの時に俺は死んでたはずだしな……。

   ◇

 忘れかけていた自我を、思い出しかけていた。