RECORD

Eno.44 ブルーバードの記録

◆10月13日、天浅葱の日記

再確認
自分を殺した人に命投げ打つのは無理ですね。

わりと最近まで、悲劇の全ては自分が招いたことだと思っていましたが
幼かったとはいえ自分の立場を理解している『姫君』に対し、戦況すらも伏せるのは如何なものかと。
しかも自軍……よりによって筋を通そうとした王子の作戦が穴だらけの愚策であり
それのために命を落としたとあっては……死んでも死にきれない、を許容する理由に足ると私は思います。
……少しづつ、今の自分の存在を許していきたいと思います。



大体にして、王子とか姫とかそういうものは、周囲の優秀なスタッフ達の力も込みで、王子とか姫なのであって……
転生し、一人の人として出会ったならば印象ががらっと違っても何の不思議もありません。
『どうして挨拶もできないのか』(王子ならば発達の凸凹を努力で埋めずとも周囲のスタッフがどうとでもしてくれますからね)
『どうして最低で止まってしまっている学歴を埋めたり、資格を取ったりしないのか』(同上)
『何故と話そうとしないのか』(これは最後までよくわかりませんでした。彼はに特別な感情があるはずなのに、と)


今ならわかります。
彼はずっと、自責の念に苛まれていたんでしょう。

大きなミスを犯してしまった。
そのミスで、大事な大事な姫様を殺してしまった。
ミスを犯した自分を庇って、姫様は自ら崖下に落ちた。
死してなお全ては自分の責任だと、大切なあなたを殺してしまったと泣いている。
……合わせる顔など無かったのでしょう。

いやそうじゃない、作戦ミスは自分の責任だ、本当に申し訳なかったと謝れる人だったならば、元からあの終わりにはならなかった。
転生しても化けて出てきた、今の私は存在しなかった。


正直大変腹立たしいですが……
その命一つ焚べて精々私の役に立ってくださいな、なんてしたら彼は犯した罪の重さ(作戦ミスはどうでもいいのですが(散っていった家臣達にとっては大罪です)、それを謝れなかったことで私に命二つ無駄遣いさせた事は明確に彼の罪と呼ばれるが相応しいかと)が軽くなったと誤認してしまうでしょう。
謝れなくても許されたと誤認してしまうでしょう。
だから、放置します。
償うことも許しません。
あの日姫であった私からあなたへ、これが答えです。


Bon voyageよい旅を