RECORD

Eno.5 劉 光龍の記録

◇帳の先3

つられて、一緒に笑う。
さっきまでの緊張はどこへやら。

「……もう~~~~~……さっき言ったじゃないですか。
この体の名前は、切原 雪きりはら せつ
ブルーバードとしての人格は、雪の前世にあたる……天浅葱あまあさぎ、です。


1000年前に謀殺された、亡国の姫。
本当のことなど何もない権力中枢に生まれ、『本当』を探し求め、幼くして死んだ……気位の高いお転婆姫だ。
本名は現存せず思い出せもしないが、その存在に名前をつけることがあるなら、あなたになら喜んでそれを許可するだろう。



そうして少し言いづらそうに、息を二回吸って顔を上げ直す。

「……二重人格みたいに見えっからあんまやりたくないけどさ……雪の方の人格もあんだよ。
……っつうワケでアタシ・・・が雪。……ビビんないでくれよ?
価値観とか全部一緒だし、生に未練があるのは姫様だからさ。普段は姫様でいるってワケ」

「思考のラインが二本あって、使う言語が二種類あるっつう感じ。
……アタシもアンタのこと気に入ってるよ、リー・・


同じ魂から生まれ出た、同じ価値観を持つ『天浅葱』と『切原 雪』という二つの個。
それが混ざり合っているのが……『ブルーバード』だとあなたに告げるだろう。
姫様だった自分も、現代を生きる自分も、お互いがお互いを尊重しているからこそ、二人は別々の個として一つの体に存在している。
前世の無念を一緒に晴らしその先の道を模索する、一つの魂として。


「姫様とアタシ、個別に呼んでくれてもいいしさ。
姫様に名前つけてもいいし、両方まとめた魂?の名前??つけてもいいよ。
ブルーバードじゃ呼びづらいだろ?そうでもないか?」