RECORD

Eno.232 シャルティオ&キィランの記録

或る従者の記録

 
 家族なんて要らない、温もりなんて要らない。
 こんな従者に構うな、あるじ様に構えよ。
 俺なんかどうでもいいだろ。

「……要らない、か、ら」



 記憶の底を覗いた。家族の話、親の話。
 痛いから蓋をした。

 知りたくなかったことを、好奇心の果てに知って、
 要らぬ傷を負って人間不信が加速した数年前。
 親からの無条件の愛なんて、俺にはまやかしだったんだ。

「……こわ、い」



 だから構う必要なんて。
 俺なんかよりも、大切なものがあるだろう?

 やめて、やめて、近付かないで。
 それ以上、俺に踏み込まないで。
 怖いんだ、だから来るな、来ないで、お願い。

 温もりなんて知らなくても、生きていけた。
 これからもそれで、生きていける。

 要らないんだ、か、ら。
 そのはずなのに。

「……痛いのは、何故?」