RECORD

Eno.179 アルア・フィフスの記録

いる

あとひとつなのに
なにがこんなにも邪魔をしている?




いつの間にやら血まみれの短剣を持っていて、血の気が引いた。
が、どうやら誰か他人を襲ったというワケでも無さそうで安心した。
自分の、胸元からどくどくと熱い血が流れている。
恍惚、きもちいい。もう少し切り開けたなら、もっともっと……。

ほらやってしまえと声がする。頭の中で声がする。
脳がぞわりと何かに撫でられるような感覚。




あたまのなかにナニかいる



短剣が、床に落ちた音がした。




コレは、かつて我々が
何千何万の魂を捧げて喚び出したのだ
世界を全部飲み込んで一緒に消えて行ったのに



嗚呼、と、私がひとり遺された理由を知る。
そうか、乗り物だ。消える世界からこの世界に渡るための。
次に、この世界を壊すための。

私に乗ってこの世界に来て
私を使って魂を集め
私を食い破って出て行って

そうしてまたどこかで成長するのだろう
何千何万のたましいをつかって。


私から、故郷も家族も思い出も仲間も世界も人生も信仰も全部奪っておいてこれ以上

血も肉も魂も捧げます、なんて
そう言ったな。確かにそう言った。




「アルア…………カミサマってのは、いなくはならないんだよ」



でもまァ大丈夫。アナタに任せれば
心配しているような事にはならないだろう。絶対に。
それが分かっているので、取り敢えずは呑気に酒をあおった。