RECORD

Eno.44 ブルーバードの記録

◆10月17日、天浅葱の日記

父上
きちんと別れも言えなかった娘を、どうかご容赦ください。
あなたの娘として生まれたことを、後悔したことはありません。
待望の第一子でしたのに、男でなくてさぞやがっかりなさっただろうと……
女である私は、家のために切り捨てられるパーツであると、婚姻の道具であるとばかり考えていました。
ですが
そういう『演出』こそが、周囲に気取られないように、家を存続させる工夫であったことを
……この体に転生した後に知るなど……自分の至らなさに反省をするばかりです。

跡継ぎではないように見せかける必要が、あったのですね。
本来ならあの刀は、弟が持っているべきものでした。
跡継ぎの証、あの家があの家である証。
家にとって一番大切な物が何故、『切り捨てられる』はずの私の手元にあったのか……私は、1000年を過ぎても思考が追いつくことがありませんでした。



父上
私が最期を迎えるより前に、弟と共に……父上は亡くなっておられたのですね。
……戦況を整理しました。
私が死ぬ手前、明らかに流れが変わった瞬間がありました。
その時まで……父上は、帝の(便宜上帝と書きますが、帝すら動かす力もそこに含めるものとします)勢力を……
その命をもって、食い止めてくださっていたのですね。
そして、父上と弟を斃したのに、帝勢力は我が家の権力そのものであるあの刀を見つけられなかった。
……私が持っていましたからね。
だから、必死になって……暗部を投入し私を始末した、それが我が家の……全てです。
あと一歩、本当にあと一歩の所でございました。
あの場所まで私の命があったのは、父上の深い愛情の賜物です。

ここに、謹んで……御挨拶を申し上げます。
『天浅葱』ここに戻りましてございます。
生前かけていただいた沢山の愛情に、雪ともに深く感謝しております。
どうぞ、安らかにお眠りください。
父上の征かれる先に沢山の幸せがありますことを、私達は切に願っております。



弟へ
破天荒な姉の影に押し込められ、長男でありながら理不尽な思いを沢山したことと思います。
……私は少し貴方が羨ましかった。
貴方のように目立たずにいられたなら、どんなにか良かったか。
最終的に姉の盾とならざるを得なかった貴方の人生に、せめて何か楽しい事があったら良いと思うばかりです。
今の今まで、私よりも貴方が先に亡くなっていたなどとは、想像もしていませんでした。
男児である貴方の方が人生に恵まれていると、信じていた。
……実際は逆だったのですね。
貴方の征く先に、次は安寧と幸せがありますよう。
















誰にも会わされず
落命の現場すら100年見ることもできず
何も知らされずに天界の個室に留め置かれた、その理由
やっと……わかりました。
あれは、姫が一人崖から落ちただけの話ではなく……私があの家の最後の一人希望で……
……私が死を迎えた時には既に、誰も……此岸にいなかったのですね……