RECORD

Eno.346 レブン・レヴンの記録

レヴン氏へ


息災かね
我々は今 かのフラウィウスを離れ 故郷たるイタリアの地に居る
もっとも私の故郷は既に滅びたローマ帝国であるからして あまり思い入れはないがね
どのような場所かというと……概ねフラウィウスだな
三方が海に囲まれた温暖な半島で どういう因果か
こちらにも円形闘技場がある 今は史跡として残るのみで興行はないがね

私は元々ここのグラディエーターだった
路を誤り 死なずの身体となってしまったがね
貴公はその点において自らを若輩者と言っていたが 私はそうは思わない

前後のいきさつはさておき 貴公が騎士団を復興しようと躍起になった事は
私がこの祖国を東西に分割統治されんとするのを防ごうとした時の
一種の愛国心に比類するものだと評しているからだ
結果として過ちになったのかもしれんが それは長命種にとって……
かけがえのない 価値を持つものさ

だって考えてもみなよ どうあがこうが やがて国体は保てなくなり
ふるさとは亡くなり 家族も死に絶えた先で いったい何が残る?

根付いた信仰と 望郷とを束ねて 辛うじて自己を維持できる
だから私は 貴公が成す事全てに意味があると思っているんだ

シュガーレスへの入れ知恵についてもね

分かっているかもしれないが 貴公が世紀を跨ぎ
未だ心身ともに健やかなる頃 私とシュガーレスはもういない
だがあの子の鮮烈な闇に僅かにでも触れたのであれば
その前途が幸なものだと伺い知ることで 貴公は自らの行動に意味を見出すだろう
あるかなきかの小さな光ではあるが
それはいつかアイゼンの爪のように 崖際で踏みとどまる幽かな楔となる

迂遠な言い回しになったが 改めて貴公に感謝をしたいという意味さ
私は最期までまともな大人にはなれなかった
貴公は「私だって」と云うかもしれないが 私からすれば貴公こそ英雄さ

あの子に寄り添ってくれてありがとう


プリムラ・マーメルクリア