RECORD

Eno.227 アルティナ&アルティカの記録

或る日の伝言

 
 風の王子に、メッセージの魔法ひとつ。

  ◇

──ハロー、兄様は異世界で元気でやっているかしら?
──シャルとキィランも……元気、だと嬉しいわ。
──声と喋り方で分かるよね、わたしよ、ティナ。
──兄様に伝言があって。一方的な連絡で失礼するわね。

──そろそろ、帰ってきて欲しいの。帝国が変な動きしてる。
──兄様とキィランの情報収集力を借りたい。
──わたしたち双子では、出来ることに限度があるんだ。
──何にも囚われない、自由な兄様にしか出来ないことがあるの。

──本当は兄様の誕生日まで、いても良いよってしたかった。
──でもさ、これ、戦争になるかも。対処は早めにしないと。
──ごめんね。


 少し、間があった。

──具体的には、遅くとも11月末までには帰って。
──流石の兄様でも、今回ばかりは従ってもらうわよ。
──お願いなの。戦争が始まってからでは遅いのよ。
──そんな訳で、それじゃ、また。


 一方的に、連絡は終わった。

  ◇

「……お遊びも、休暇も、
 そろそろおしまいかぁ」



 知っていたよ、分かっていたよ。
 運命が、近付いてくる。

「……お別れの準備を、始めなきゃ」



 楽しい夢を見られたね。
 あの子は確かに成長したね。
 ならば夢が覚めても、
 辛い現実の中でも生きていけるよね。

 帝国の動きは前から知ってた。
 俺が休暇を得られるのは、
 これが最後のチャンスかも知れなくて。

 シャルに声かけて、
 この世界に来て。それが始まり。

 俺は確かに自分勝手だけれど、
 俺の居場所が奪われるのは嫌だ。
 だから俺は俺なりに、
 あの帝国と戦わなきゃならないのは分かってた。

──そしてその布石として、
 成長したシャルの存在が、必要不可欠なことも。


 俺は良い奴じゃないよ。
 俺は俺の目的の為に、大切に育ててた花を利用する。
 シャルは俺に頼まれれば逆らえない、分かっててそれをやる。

 酷い兄さんだって笑ってくれよ。
 君の夢を終わらせるのは、俺だ。

 ……俺も、いい加減起きなきゃな。


「……おはよう、魔導王国。
 おはよう、俺の国、俺の居場所。
──おはよう、現実



 さて、俺もちゃんと酒場に出るか。