RECORD

Eno.199 スレイアの記録

竜を殺す竜殺し


自分が竜として生まれるずっと前から、竜殺しはいたらしい。
自分が人の形に生まれ変わった時にはもう、数えきれないほどいたらしい。

剣で、槍で、斧で、棍で、杖で、
考えられる色々な方法で、竜殺しを成し遂げた者たちが生まれていたようだ。

伝説として、今も名前を残してもらえてる者はいる。
けれどそれ以上に、あったかもしれない名前をなくした竜殺しが沢山いる。

束の間の名誉だけを手にして、歴史のどこかに去っていった彼らは。

彼らは今。


自分の中にいる。


 『どんな鱗だろうと隙間がある。ならば貫けるとも』


     『心を通わせてみせましょう、この杖と私の祈りがあれば──』


『───竜を酔わせて首を落とすってのは常套手段だろ、なあ?』


  『竜殺しの剣ドラゴンスレイヤー。それ以外に説明がいるか』



声がする。在りし日々の、忘れられた者たちの声が。

誰かの言葉の記憶が。自分はかつてそうであったという思い込みが。

……認識が。ありとあらゆる武器の知識を与え、
悪しき竜をあらゆる手段で持って倒すか、封じるか、改心させるか、
何にせよ竜を殺すための最適な、それこそ武器そのものとしてこの身に押し込められた。

(その出自から──
 まさか“殺すべき竜探し”のために暇が出されるとは……)

しかも無期限。世界が平和な証拠である。
とはいえ、暫く冒険者として気ままにやっているうちに、
異世界と繋がった闘技場にまでたどり着くものだから、生きてみるものだ。

受けた実験の数々も、ここで沢山の武器を使って戦うためだと思えば、
そう悪いものでもなかったように思える。

「……」

(今日は、細剣の気分だ)

ただ、一つだけ難点があり。
かつての記憶達から武器の知識を得る、ということは──


「───さあ、今回は……
    華麗に仕留めてみせよう」




無口気味で本能に従順な竜の人格は、
簡単にその記憶に影響されてしまう、ということである。