RECORD

Eno.637 ナルシテート・スラミガル・ビビの記録

イイ人

あちこちと精神に引っかかることが起きる。
紫目であるという迷い子に、自分が肩入れしすぎていると指摘されて重ねている自覚を余計に持つ。
だからといって今更どうすればいいのか。突き放すにしたって、誰がまともに面倒を見れるのかとナルシテはため息をついた。
メリルの事もある。アボカドとの問題も。医者の治療に頼り切りな現状も。
ざらつく感情が、ささくれ立つ過去が、首を絞めるようにがんじがらめにしてくる。
息が苦しい。
どこに逃げればいいものか。
逃げ場所はひとつ。予約はしているもののもう少し手に入れるのは先で、中身があまりにも柔らかいからあまり使う事をやや危惧している。

ふと、思い出すことがあった。

「合鍵。 長居はするなよ」



あれ、結局どこに、とは聞かなかったな。
もう一度聞こうとは思わなかった。
あの男は間違いなくろくでなしの部類だ。
一度許すと自分の性格を鑑みてもずるずると許しかねないと思うところがある。
博愛の連中は嫌いだった。今もそうだ。情が深い連中が嫌いだ。情が浅い連中も。自分の傷に踏み込んでくるやつはみんな。

逃げ道をいつも探している。

「可哀想ないい人だって」



「……」
「アタシなんかが可哀想なもんかよ」
下を見ればきりがない。ナルシテは自分より下を救う事で自らの下を作り、自分を慰めているだけだ。

うんざりしている。価値がない善行だった。