RECORD
Eno.44 ブルーバードの記録
◆10月22日、天浅葱の日記2
「目的地目前か……趣味が悪ぃな、相当強い恨みを感じる」
私の最期の様子を聞いたりーくんは、そう吐き捨てた。
襲撃の様子を振り返ると、それが用意周到に準備されたものであることが私にもわかる。
目的地が目の前で、挟撃が可能かつ、ターゲットのみならず隊ごと全滅させられる、追い込める場所(あの崖の神社)がある。
崖から飛んでうまく海に落ちられたとしても、あのごつごつの岩場と荒波では生存率はかなり低いだろう。
季節も程よい。
暖かくなり始めた日差しに花が咲く季節。
目的地を目の前に浮かれる姫様一行に、絶望を塗りたくるのに良い季節だ。
実際私も花が咲いていた、ということをよく記憶している。
「全滅が前提でありつつ、生き残った者がいたとしても、歯向かう気にならないように絶望させる??」
「…………そう」
「随分丁寧なんですねぇ」
『強い恨みと殺意』を抱かれる本人である私がどことなく他人事なのは、実働部隊から殺意は感じても恨みは感じていなかったから。
だって第一、それが初対面。
彼らは仕事で殺しに来ているだけで、私は彼らに悪いことをしたこともない。
王子を敵方の一撃から守り一人崖から落ちた私の、最期の言葉は「危ない!」
彼に振り下ろされる刀の一撃を躱すために彼の手を振り払って、私は崖から落ちた。
当時、まだ11~12歳くらい。
現代ならランドセルを背負っている歳だ。
恨み言を言うでもなく、誰かを罵るでもなく、身を挺して王子を守った。
まだ幼い姫君がそのような行動に出たことに何も感じぬ者がいたなら、羨ましいかなそれが権力中枢で生きる才覚だ。
その後どうなったのか、というのは、私は一切知らない。
崖下でやだ~~~~~~~~~~地縛霊になる~~~~~~~~~~~こんなのやだ~~~~~~~~~~と泣いていた幽霊の私は
さっさと幽霊の王子に抱え上げられさっさと天界に連れ帰られた。
その場に少し留まり、敵方の会話でも聞けたなら、何が起きていたのか納得もできたかもしれないが
王子は私が状況を把握することを嫌がった。
誰が?何のために?どうやって?都落ちする惨めな姫にわざわざ暗部を?
その謎が解かれるのは、そこから1000年と60年後のこと。
……それも、王子ではないりーくんによって、だ。
私の死体がどうなったのか、というのもよくわからない。
私が落命現場を確認できたのは、それから100年後。
当然手がかりに繋がるものは何も無かった。あの時の木が随分大きくなったな!くらい。
盆も彼岸も全てを無視し、100年、天界は私を決して降ろすことがなかった。
……絶望を、というなら見せしめにそのまま放置でもされていたのだろうか?(神社で死体放置は失礼が過ぎるのでは?)
家を示す刀は回収されているだろうから、それをもって全滅と報告したのかもしれないし
船を出して崖下から私の体を回収し、首でも持っていったのかもしれない。
……家から出たことが殆どない者の首を見ても、誰なのか誰もわからないだろうし
身分を示すものを何も身に着けずに死んでいる、私の死体に何か価値があるのかはわからない。
(身分を示すものを身に着けない、というのは立場ある者にとっては屈辱的なことで、私が『家から切り離された』『悪いことをしてしまった』と感じていた理由の一つでもある)
親子で仲良く首を並べて見せしめにしたり、後頭部の穴を埋めてしゃれこうべでお猪口でも作ったのだろうか。
私の頭で飲むお酒、美味しい??
失礼、清酒など飲める身分ではございませんでしたね。
ドロドロに濁った美味しそうなどぶろくですこと。
骨の向こう側がまったく見えませんわよ!(煽りの先生・りーくん)
当時は祟りが普通に信じられていたから、損壊せず放置したり化けて出てこないよう手厚く葬った可能性も高いが
個人的には頭で蹴鞠したりお酒飲んでて欲しい。
時代背景を考えるともれなく全員ろくな目に遭っていないので
次はお前の頭がお猪口で蹴鞠だ!
……と、まあこのくらい……その立場に生まれてしまったという覚悟はあったから、隠さずに教えて欲しかった。
受け止めることくらい、当時の私にもできていたと思うから。
最期くらい『信じて』欲しかった。
……ねえ、そうは思いません?王子様。
私の最期の様子を聞いたりーくんは、そう吐き捨てた。
襲撃の様子を振り返ると、それが用意周到に準備されたものであることが私にもわかる。
目的地が目の前で、挟撃が可能かつ、ターゲットのみならず隊ごと全滅させられる、追い込める場所(あの崖の神社)がある。
崖から飛んでうまく海に落ちられたとしても、あのごつごつの岩場と荒波では生存率はかなり低いだろう。
季節も程よい。
暖かくなり始めた日差しに花が咲く季節。
目的地を目の前に浮かれる姫様一行に、絶望を塗りたくるのに良い季節だ。
実際私も花が咲いていた、ということをよく記憶している。
「全滅が前提でありつつ、生き残った者がいたとしても、歯向かう気にならないように絶望させる??」
「…………そう」
「随分丁寧なんですねぇ」
『強い恨みと殺意』を抱かれる本人である私がどことなく他人事なのは、実働部隊から殺意は感じても恨みは感じていなかったから。
だって第一、それが初対面。
彼らは仕事で殺しに来ているだけで、私は彼らに悪いことをしたこともない。
王子を敵方の一撃から守り一人崖から落ちた私の、最期の言葉は「危ない!」
彼に振り下ろされる刀の一撃を躱すために彼の手を振り払って、私は崖から落ちた。
当時、まだ11~12歳くらい。
現代ならランドセルを背負っている歳だ。
恨み言を言うでもなく、誰かを罵るでもなく、身を挺して王子を守った。
まだ幼い姫君がそのような行動に出たことに何も感じぬ者がいたなら、羨ましいかなそれが権力中枢で生きる才覚だ。
その後どうなったのか、というのは、私は一切知らない。
崖下でやだ~~~~~~~~~~地縛霊になる~~~~~~~~~~~こんなのやだ~~~~~~~~~~と泣いていた幽霊の私は
さっさと幽霊の王子に抱え上げられさっさと天界に連れ帰られた。
その場に少し留まり、敵方の会話でも聞けたなら、何が起きていたのか納得もできたかもしれないが
王子は私が状況を把握することを嫌がった。
誰が?何のために?どうやって?都落ちする惨めな姫にわざわざ暗部を?
その謎が解かれるのは、そこから1000年と60年後のこと。
……それも、王子ではないりーくんによって、だ。
私の死体がどうなったのか、というのもよくわからない。
私が落命現場を確認できたのは、それから100年後。
当然手がかりに繋がるものは何も無かった。あの時の木が随分大きくなったな!くらい。
盆も彼岸も全てを無視し、100年、天界は私を決して降ろすことがなかった。
……絶望を、というなら見せしめにそのまま放置でもされていたのだろうか?(神社で死体放置は失礼が過ぎるのでは?)
家を示す刀は回収されているだろうから、それをもって全滅と報告したのかもしれないし
船を出して崖下から私の体を回収し、首でも持っていったのかもしれない。
……家から出たことが殆どない者の首を見ても、誰なのか誰もわからないだろうし
身分を示すものを何も身に着けずに死んでいる、私の死体に何か価値があるのかはわからない。
(身分を示すものを身に着けない、というのは立場ある者にとっては屈辱的なことで、私が『家から切り離された』『悪いことをしてしまった』と感じていた理由の一つでもある)
親子で仲良く首を並べて見せしめにしたり、後頭部の穴を埋めてしゃれこうべでお猪口でも作ったのだろうか。
私の頭で飲むお酒、美味しい??
失礼、清酒など飲める身分ではございませんでしたね。
ドロドロに濁った美味しそうなどぶろくですこと。
骨の向こう側がまったく見えませんわよ!(煽りの先生・りーくん)
当時は祟りが普通に信じられていたから、損壊せず放置したり化けて出てこないよう手厚く葬った可能性も高いが
個人的には頭で蹴鞠したりお酒飲んでて欲しい。
時代背景を考えるともれなく全員ろくな目に遭っていないので
次はお前の頭がお猪口で蹴鞠だ!
……と、まあこのくらい……その立場に生まれてしまったという覚悟はあったから、隠さずに教えて欲しかった。
受け止めることくらい、当時の私にもできていたと思うから。
最期くらい『信じて』欲しかった。
……ねえ、そうは思いません?王子様。