RECORD

Eno.423 モルドの記録

顔を上げて歩く青い顔の男

モップをお守りのように握りしめ、地面を見て歩いていた。
それが初めて闘技場の門をくぐった時の、青い顔の男の姿。


一月と半ほど過ぎた今、訪れた時の道を逆に、港へ向かう。
穏やかな日差しのなか、青空を視界におさめ、前を向いて。

怪物の名残である青い肌に、怯えの青はもう差していない。
足取りは強く、軽やかに。重くなった鞄もしっかり抱えて。


青い海が見える。港に着き、船に乗り込む前に、振り返る。
闘技場の方角へ。この地に住む友人たちへ振り向くように。

すごした時間を思い出しながら、一礼する。感謝を込めて。
すぐに顔を上げる。出航の時間は近い。そうでなくたって。

友人たちが前に進んでいる。自分も止まってはいられない。
一礼した方角に背を向け歩き出し、船に乗る。帰路につく。


そして男は国へ帰る。大切な人のもとへ帰る。
ただいまの言葉の先の、未来へと進んでいく。