RECORD

Eno.127 シトルーの記録

部屋

どうして誘ったんだろう。
気まぐれ? 心配? 慈悲? 

オルゴールと折り鶴と、最低限の家具と得物だけがある殺風景な部屋。
ひとりで住むには広い部屋。

何もない部屋だった。何もないから、なんとなく誘った。

大きな耳、大きな尻尾。
傷のある頬、牙のある口。爪のある手、なくなった片腕。

互いに何も知らなくて、信じていいのかすらまだ分からないのに。
一度だけ部屋に泊めて一緒に眠って。たったそれだけの。

……あぁ、そうか。片腕で思い出したから、なのかも。