RECORD

Eno.44 ブルーバードの記録

◆10月23日、天浅葱の日記

短い生涯の中、私に見えていた世界は狭かった。
殆ど家の中から出たこともなく、外の世界はただ憧れるだけの遠い場所。
ただただ私は『良い』環境に置かれた。
ただただのびのびと尖った個性を尊重され、お転婆を咎められることもなく良い教育を施された。
今になってその、ホワイトに強く振れ過ぎた家の『おかしさ』に気づく。

帝の血を取り巻くのは下心と謀のドロドロの地獄であり
本来ならそこに個性だの、真実だの、心だのといった要素は必要ない。
いかに他者を蹴落とし権力と金を手にするか。それが全てだ。



転生を経た私の記憶はあやふやで、思い出せない箇所も多い。
例えば母上に関する記憶はかなり薄く、所々で父上の隣におられた、程度に留まる。
次いで弟に関する記憶も薄い。
これは、二人が『私の人生を左右する要素ではなかった』からで、父上の記憶が強いのは『彼は私の人生を決めるものだった』からだ。

家は父上を頂点に、使用人に至るまでしっかりと階級分けがされていた。
帝はそこそこに変わっていたが、私がその時の天皇を従兄弟と認識していたことから
父は帝直系の血を持つ、それもかなりの良血のはず。
狙おうと思えば帝にもなれるはずだが、そのような『現人神』が徹底した嫌権力のホワイトな家を構築していたのは……
幼少期、そういうものを見すぎて嫌になってしまったのかもしれない。

あの時代に、真心で誠実に接するホワイトな家があったなら絶大な支持を受けるだろうし
いくら父上が権力が嫌いでも、権力の方が彼を離さなかったのかもしれない。
帝より強いものがあったなら、それは……脅威だから。