RECORD

Eno.44 ブルーバードの記録

◆10月24日、天浅葱の日記

仮説

父上がどす黒い権力争いを嫌い、ホワイト過ぎる家を構築してしまった結果
大人気となり帝を凌ぐ力をつけてしまった。
鰻登りの人気は、最早父上が抑えようとしても歯止めがきかず
娘を傀儡帝の後ろに迎えることで帝側は父上を味方につけようとしたが、娘と父上はこれを拒否。
父上は代案を出すも帝側は危険勢力だと認識し、始末しようと動き出す。

ここでもし、父上が黒いものも乗りこなし、打って出る判断をするお方だったら
そもそも私は帝の後ろに送られていたか、教育方針が違ったはず。
なるべく血も涙も流したくない、そういう思考回路だったのではと現段階の私は思う。
……結末は全滅という結末だが、1000年後の世は父上が願った世だろう。
生まれる時代が早すぎただけで、我々の考えは正しいことが証明されている。
私も権力争いや、人の足を引っ張ることが嫌いだ。
そもそも奪うという思考回路がわからない。
そのスキルが欲しいなら、努力をすればよいのだ。



そこで、弟が出てくる。
平凡、普通、地味。
当時の弟の記憶が殆ど無いため、今生の弟の人生をトレースしよう。

生まれた時からやたらと目立つ姉がいた。
自分も同じようになれるのではと、姉の真似をしたけどうまくいかない。
姉が楽しそうにスポットライトを浴びることを、次第に疎み馬鹿にするようになる。
姉が本気を出していない学校の勉強では姉より良い成績を取れるが、学習塾の成績では姉に及ばない。
音楽が好きだったが、音楽は姉のメインフィールドだ。
結果……大学で出会った姉と被らないジャンルのジャズにハマり、せっかく就職できた優良企業をやめ音楽をすると
家のリソースを身勝手に自分のためだけに使い、身勝手に渡米したが
入れた学校は音楽学校でもなんでもない、普通の学校に行けない被差別階級の学校だった。
卒業公演の演目として選んだのは、あれだけ馬鹿にしていた……姉がスポットライトを浴びていたあの国の伝統音楽。
は、本質が何もわかっていないとそれに冷ややかな目を向けた。
調律された現代楽器で割り切れるものではないからだ。

プロになる、と言って先に仕事を辞める無計画な者が成功できるほど、音楽は甘くない。
……だが、今回の本題はそこではなく……
『やたら目立つ姉がいたら平凡な弟はどう思うか?』ということ。
才に恵まれた姉なら、努力すればなんでも(実際はなんでもではないが)できるが
平凡な弟は努力をしても……及ばない・・・・のだ。



父上ならば、弟も自己肯定感を持てるようにうまく取り計らっていたと思うが
結局、平凡な弟は非凡な姉の盾として使われてしまった。
それは、自分は才能という権力に殺された、努力で勝てない者は奪うしかないんだ、と闇落ちしても仕方がない。
父上が頑張って作り出したホワイトの中にも、どす黒い争いの種は……生まれてしまうのではないかと、考えた。

私が誰も恨まないのは、才に恵まれただけ。
努力をすれば跳ね返る器を、天から授かった。
努力でどうにかできるから、他人を気にすることなく努力をするだけでいい。
(どんなに焦がれても辿り着けないものはあるが、足るを知る、そこで十分だと判断できる判断基準を持てているのは……幼少期の成功体験の数の差かもしれない)
父上もきっとそう。
大変に頭が切れるお方だった。
その格差を埋めるものは……1000年後の今でも確立されていない。