RECORD

Eno.284 ビアノル=フリントの記録

Échappé

──くるり、と手に持っている刃を回す舞わす
鉄と鉄がぶつかる。響く甲高い音。迸る火花。
思わずくすり、と笑みが零れる。

相手の力をいなすように一歩後ろへ。
ぐらり、と崩れる体勢を見て、逆手に刃を持ち替え──

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「……」
其処で私は目を覚ました。

チチチ、と響く鳥の声。遠くから聞こえるモノマキアの喧騒。
此処フラウィウスに来て数日。
就寝時の身の安全が確保されているからか、いつもよりぐっすりと寝て夢を見ていたようだった。

ふあ、と小さくあくびをしてベッドから起き上がる。
重力に引かれてふわりと金糸の様な髪が舞った。

洗面所で顔を洗い、髪を結う。
クローゼットを開ける。黒いタイツに足を、黒い手袋に腕を通す。
最後に腰のリボンが解けないようにぎゅ、と固く結べば、起きてからものの十数分で普段の恰好になっていた。

とんとん、と足の調子を確かめるようにつま先で床を叩く。
そのままその場でくるりと一回転、ドレスの裾が舞い上がる事を確認。
ふとももに手を伸ばして、ガーターベルトについている鞘からÉchappé
──愛用している双剣の片割れを抜いた。

満足げに笑みを浮かべて、部屋を出る。
そうして、今日も闘技場へと足を運ぶのだ。

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※双剣/Échappé
──脚を閉じたポジション(1番または5番)から開いたポジション(2番または4番)に動かすこと。
「こうしてみると"閉じてから開くと"、2つの同じ剣が出来ているみたいじゃありません?」