RECORD
Eno.15 の記録
みないで
こんなわたしを―
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「すこし夜風にあたってきます」
半分本当で半分は別の目的がある言葉。
そんな断りをひとつ入れて、あの人といっしょの宿から駆け出した。
水路にある橋の下、星明かりと月だけが光になる場所で足を止める。
人の気配が無い事を確認してから、背中を壁に預けた。
握ってきた手紙へと目を向ける。
何となく、これは一人で見た方がいい気がして

パリッ、と音を立てて蝋を剥がした
手紙を開けば、文字が目に映る。
薄い明かりの下であっても、見えてしまう。


―あぁ ”やっぱり”

他にも文字がある筈なのに、その文字だけが浮かび上がる。
その文字しか頭に入らなくて、頭に入った傍から何かに食い荒らされる様に痛む。
知っていた。知っていた。
きっと、見ないフリをしていただけ。だって、あの時わたしの体を切り裂いたのは、あの人と同じ尾だったから。ずっと前から互いに証を残していたのなら、わたしの入る余地なんて無い。
それを嫌がる資格も権利もわたしには無い。自分だって人のものを武器として持ってるじゃないか。なのに、あの人のものだけ言う事なんておかしいって知っている。痛みを感じるわたしがおかしいのだ。ふたりが自分の知る前から知り合ってた事もずっと知っていたじゃないか。あの日、テラスでふたりでパフェを食べていたことも、嫉妬してずっとくっついていた姿も知っている。愛していることを知っている。あの人が気にする理由だって、同じ不老不死ゆえのつながりもそこにある共感できる思いも。それはわたしには無いものだから。無い物だから、ふたりはずっとつながって切れないのだろうか。それはわたしが消えてもずっと…?だって、わたしが死んだ後でもふたりの手には互いの武器があるのだろう。わたしの消費期限は長くても100にもならない。数千年には及ばない。そこで何も起こらないと言い切れるのだろうか。お父様とお母様が互いのトクベツになれたのは、同じ生きる時間を共有できていたからじゃないのか。それならわたしは何だろう。わたしの存在っていったい何だったのだろう。愛して欲しいと壊して欲しいと願った時間も、熱に安心したこころも意味が無かったのだろうか。それさえも長い時の中では、どうでもいいものだっただろうか。分からない。どれだけ頑張ったところでやっぱりわたしも、あの人の通過点でしか無いのだろうか。いやだ。そんなのいやだ。ずっといっしょがいい。わたしだけがいい。わたしを最期にしてほしい。何で。何でよそみするの。やだよ、やめてよ。いたいよ。チガウ。わたしが痛がるから話すことも出来ないんだ。わたしが嫌がるだろうからってまたあの人の願いを封じてしまう。ごめんなさい嫌だって思ってごめんなさい。ちがうの。違う違う違う違う違う。
これはきっと、ずっと前からふたりがしてた事だから。あの人が言わなかったのもわたしが見ないフリしていたのも、わたしたちが始まる前からだったから。ほんとうに?それだったら…恥ずかしいから見せないでほしい気持ちがわくだろうか。そういえば、あの日あの人は誰との用事で出掛けていたのだろう……やっぱりあなたサマはわたしのこと、まだ分かってない。分かってない。もう、なにもあげない。生まれ変わりなんてしたくない。やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ

ちがうちがうちがうチガウチガウチガウ違う違う
わたしだけを見てくれるって誓ったから。いつでも考えてくれてるって言ったから。わたしのしあわせをみてくれる。わたしもあの人のしあわせを見ていたい。だいじょうぶ。大丈夫。知っている。あの人が恐がりで多くのこうふくを望んでしまうこと。優しくて、わたしだけを見れるほどに非道になれなくて、いろんなものを見てしまうこと。
だから、わたしはあなたの世界を見に行きたいだなんてワガママを口にした。あそこにずっと居れば、いろんなものが奪われそうで、いつまでもわたしは痛くて、あなたにとってのわたしだけになりたくて。瞳を食べてしまったのだって、太陽があなたを映した時に切ってしまえるような保険で、ずるいわたしがいつでもそこにいる。
そんな悪い心がいつもある。自分だっていろんな人と声を交わすのに、拗ねれば他の人のところへ走って行くような悪い子なのに。周囲と話して楽しそうなあなただって好きなのに、それは視線を奪われた訳では無いと分かってる筈なのに、たまに頭が痛くてわたしが揺らいで、息ができてるかわからなくて。やだな。こんなわたしを知られたくないな。あの人にとっての愛される子でいたいな。我慢できるよ。いい子にできるよ。
でも、やだよ。苦しいのも愛だって、これも愛だって知ったけれど………痛くて苦しくて、傷を作ってもらえるのは嬉しいのに、嬉しさと同じくらいにずっと、ずっと…
早く いっしょに 壊れたい

一瞬、浮かんだ底にある言葉を振り払うように頭を振った。
頭痛が酷くなろうとしらない。そんな事よりもこれを振り払いたくて。

誰も居ないのに
誰も聞いていないのに、言い訳のような言葉と謝罪を落とす。
水路を流れる川が濁って見えた。

悲しくて辛くて、自死を選ぶ様な痛い道を望んでなんて無い。
あなたと至るのは幸福な終わりがよくて、しあわせでありたいから毎日頑張っていつかの日まで生きていたい。
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痛む頭を抑えたまま、膝をついた。
ポケットの中を探って、丸い輪郭を感じれば握りしめる。
だいじょうぶ
大丈夫

子供の周囲を青い蝶や魚が浮かんでは消えていく。
握りしめた指の先から血液が温まるようにして、体に熱が戻っていく。
魔法使いの友達から貰ったもの。
不安定な心を落ち着けるための魔法。

青い生物の動きに合わせて、息を吸う 吐く すって はいて すって はいて
狭くなった視界を広くする。自分の生まれが人と異なることを知ってる。思考がどこか歪んでると、悪魔や魔女の子にみえることを知ってる。
けれど、あの人に愛される子だってことも知ってる。

青い光の中、もう一度ちゃんと手紙を見る。
何かあるとすぐに頭がいっぱいになって、逃げ出すわたしだけれど、大丈夫だと何度も声を貰って来たから。
熱を取り戻していく心に言葉を落としていく。

それがあったから、こうして手紙を送れた。
そういう喜びの手紙。
あの人の武器だって…わたしが何か思い出を残そうとしたのといっしょ
こころを置いてきてしまわないように、そうしたのだろうっと……あの人の視線を信じる。

あなたはわたしを知ってるから。
ひみつを共有する特別感を喜ぶことを知ってるから、そう言葉を選んだのだろう。
洋服を見てほしい、と。信じてる、と
それはわたしへ向けた言葉。わたしへのもの。
同封された写真を取り出す。
写ってるのは、わたしの服によく似た服を着たあなた。
ついたアクセサリーは…わたしの色といっしょ。
閉じた瞳はわたしの中。
傷つけないように指先で写真をなぞる。

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落ち着いて熱を持ったこころに宿るのは、どうしようもない劣等感と後悔。
上手く愛情を受け取れない。抱いてすぐにビターに溶かしてしまう、甘味を求めているのに、歪んで取りこぼして、勝手にまた悲しくなる。
そんなどうしようもない子がわたし。必死に隠して背伸びをした中身。
嫌い。こんなわたしが大嫌い。
外で良かった。
あの人にそんなわたしを見せたくないから。
きっと、いくつかは知られている。知られているけれど、それでも多くは見せたくないから。
しあわせな姿ばかりを覚えてほしいから。
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過ぎ去った心の動揺を思い返しながら、ぽつりと口にする。
手紙にあった文字。どうして、こんなわたしを信じられるのだろうか。
黎明の教えとカミへの崇拝なら信仰を口に出来るけれど、簡単に揺らぎやすい部分も多い子供には分からなくて。
だけど

あの人を壊す前にわたしが壊れてしまう。
すでに歪んではいるわたしでも、しあわせの前に壊れることだけは違う。
愛される子である、という言葉を繰り返す。
信じる。受け止める。
そんなしあわせの一歩を刻んで、いつかは正しくあの人といつまでも愛し合いたい。

教えの幾つかを口にする。
何度も読み、声にして覚えた言葉。
黎明は己の中にあるもの。

すっかりと涙でぐしゃぐしゃになった顔を袖で拭う。
手紙と写真を封筒へと戻してから、持っていた本に挟んで呼吸をひとつ。
返事を書こうかとも思ったけれど、それはきっとネックレスに呟いた方がいいだろうから、また明日。
それに、いまは
まだ少し波打つこころを抑えて、愛する人に会いたい。
顔を見たら驚かせるかもしれないけれど
抱きしめてほしい
愛を口にして欲しい
熱を感じていたい
……帰ろう
あの人のところに
涙声になるかもしれないけど、ただいまがしたい。
触れてほしい。
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※血.傷表現。精神混乱あり
「すこし夜風にあたってきます」
半分本当で半分は別の目的がある言葉。
そんな断りをひとつ入れて、あの人といっしょの宿から駆け出した。
水路にある橋の下、星明かりと月だけが光になる場所で足を止める。
人の気配が無い事を確認してから、背中を壁に預けた。
握ってきた手紙へと目を向ける。
何となく、これは一人で見た方がいい気がして

「……」
パリッ、と音を立てて蝋を剥がした
手紙を開けば、文字が目に映る。
薄い明かりの下であっても、見えてしまう。

黒い影が揺らめいた。

「……おねぇさんの……偃月刀……」
―あぁ ”やっぱり”

「きれてなかった」
他にも文字がある筈なのに、その文字だけが浮かび上がる。
その文字しか頭に入らなくて、頭に入った傍から何かに食い荒らされる様に痛む。
知っていた。知っていた。
きっと、見ないフリをしていただけ。だって、あの時わたしの体を切り裂いたのは、あの人と同じ尾だったから。ずっと前から互いに証を残していたのなら、わたしの入る余地なんて無い。
それを嫌がる資格も権利もわたしには無い。自分だって人のものを武器として持ってるじゃないか。なのに、あの人のものだけ言う事なんておかしいって知っている。痛みを感じるわたしがおかしいのだ。ふたりが自分の知る前から知り合ってた事もずっと知っていたじゃないか。あの日、テラスでふたりでパフェを食べていたことも、嫉妬してずっとくっついていた姿も知っている。愛していることを知っている。あの人が気にする理由だって、同じ不老不死ゆえのつながりもそこにある共感できる思いも。それはわたしには無いものだから。無い物だから、ふたりはずっとつながって切れないのだろうか。それはわたしが消えてもずっと…?だって、わたしが死んだ後でもふたりの手には互いの武器があるのだろう。わたしの消費期限は長くても100にもならない。数千年には及ばない。そこで何も起こらないと言い切れるのだろうか。お父様とお母様が互いのトクベツになれたのは、同じ生きる時間を共有できていたからじゃないのか。それならわたしは何だろう。わたしの存在っていったい何だったのだろう。愛して欲しいと壊して欲しいと願った時間も、熱に安心したこころも意味が無かったのだろうか。それさえも長い時の中では、どうでもいいものだっただろうか。分からない。どれだけ頑張ったところでやっぱりわたしも、あの人の通過点でしか無いのだろうか。いやだ。そんなのいやだ。ずっといっしょがいい。わたしだけがいい。わたしを最期にしてほしい。何で。何でよそみするの。やだよ、やめてよ。いたいよ。チガウ。わたしが痛がるから話すことも出来ないんだ。わたしが嫌がるだろうからってまたあの人の願いを封じてしまう。ごめんなさい嫌だって思ってごめんなさい。ちがうの。違う違う違う違う違う。
これはきっと、ずっと前からふたりがしてた事だから。あの人が言わなかったのもわたしが見ないフリしていたのも、わたしたちが始まる前からだったから。ほんとうに?それだったら…恥ずかしいから見せないでほしい気持ちがわくだろうか。そういえば、あの日あの人は誰との用事で出掛けていたのだろう……やっぱりあなたサマはわたしのこと、まだ分かってない。分かってない。もう、なにもあげない。生まれ変わりなんてしたくない。やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ

無意識に手は、彼から貰った方のピアスを握る。
ピアス穴を広げる様に爪先で引っ掻いて、抉って、赤色を散らす。
ちがうちがうちがうチガウチガウチガウ違う違う
わたしだけを見てくれるって誓ったから。いつでも考えてくれてるって言ったから。わたしのしあわせをみてくれる。わたしもあの人のしあわせを見ていたい。だいじょうぶ。大丈夫。知っている。あの人が恐がりで多くのこうふくを望んでしまうこと。優しくて、わたしだけを見れるほどに非道になれなくて、いろんなものを見てしまうこと。
だから、わたしはあなたの世界を見に行きたいだなんてワガママを口にした。あそこにずっと居れば、いろんなものが奪われそうで、いつまでもわたしは痛くて、あなたにとってのわたしだけになりたくて。瞳を食べてしまったのだって、太陽があなたを映した時に切ってしまえるような保険で、ずるいわたしがいつでもそこにいる。
そんな悪い心がいつもある。自分だっていろんな人と声を交わすのに、拗ねれば他の人のところへ走って行くような悪い子なのに。周囲と話して楽しそうなあなただって好きなのに、それは視線を奪われた訳では無いと分かってる筈なのに、たまに頭が痛くてわたしが揺らいで、息ができてるかわからなくて。やだな。こんなわたしを知られたくないな。あの人にとっての愛される子でいたいな。我慢できるよ。いい子にできるよ。
でも、やだよ。苦しいのも愛だって、これも愛だって知ったけれど………痛くて苦しくて、傷を作ってもらえるのは嬉しいのに、嬉しさと同じくらいにずっと、ずっと…
早く いっしょに 壊れたい

「ぁ……ちが……ちが…う……ちがう…」
一瞬、浮かんだ底にある言葉を振り払うように頭を振った。
頭痛が酷くなろうとしらない。そんな事よりもこれを振り払いたくて。

「や、ぁ……ちが、う…ごめんなさい……ごめんな、さい……ちが、う……そんな……そんなふうに…したいわけじゃ…ない…です
わたし……わたし……すてて…しまいたい、わけじゃ……ない…
…いっしょに…いっしょに……しあわせが…」
誰も居ないのに
誰も聞いていないのに、言い訳のような言葉と謝罪を落とす。
水路を流れる川が濁って見えた。

「ずっと……ずっと…いっしょがいいだけ、なんです……ほんとうです…
…かなしくて……いやで…しんじゃいたいわけじゃないです………ずっと…ずっと…あなたサマと…いっしょがいいんです……こころがすべてほしいのです………そばにいたいのです……ずっと…ずっと…みていてほしいのです…みていたいのです……」
悲しくて辛くて、自死を選ぶ様な痛い道を望んでなんて無い。
あなたと至るのは幸福な終わりがよくて、しあわせでありたいから毎日頑張っていつかの日まで生きていたい。
「ぅ……ぅ゛う……」
痛む頭を抑えたまま、膝をついた。
ポケットの中を探って、丸い輪郭を感じれば握りしめる。
だいじょうぶ
大丈夫

―ふわり、蝶が舞った
子供の周囲を青い蝶や魚が浮かんでは消えていく。
握りしめた指の先から血液が温まるようにして、体に熱が戻っていく。
魔法使いの友達から貰ったもの。
不安定な心を落ち着けるための魔法。

「……ぁ…」
青い生物の動きに合わせて、息を吸う 吐く すって はいて すって はいて
狭くなった視界を広くする。自分の生まれが人と異なることを知ってる。思考がどこか歪んでると、悪魔や魔女の子にみえることを知ってる。
けれど、あの人に愛される子だってことも知ってる。

「……あ、いする……しゅがー…れす…へ…」
青い光の中、もう一度ちゃんと手紙を見る。
何かあるとすぐに頭がいっぱいになって、逃げ出すわたしだけれど、大丈夫だと何度も声を貰って来たから。
熱を取り戻していく心に言葉を落としていく。

「ゆ、うびん……や…さん…だ、い…ひつ…」
それがあったから、こうして手紙を送れた。
そういう喜びの手紙。
あの人の武器だって…わたしが何か思い出を残そうとしたのといっしょ
こころを置いてきてしまわないように、そうしたのだろうっと……あの人の視線を信じる。

「…あたら、しい……ようふく……ひみつ……」
あなたはわたしを知ってるから。
ひみつを共有する特別感を喜ぶことを知ってるから、そう言葉を選んだのだろう。
洋服を見てほしい、と。信じてる、と
それはわたしへ向けた言葉。わたしへのもの。
同封された写真を取り出す。
写ってるのは、わたしの服によく似た服を着たあなた。
ついたアクセサリーは…わたしの色といっしょ。
閉じた瞳はわたしの中。
傷つけないように指先で写真をなぞる。

「…ぁ……かわいい………
ふふっ……にあって…ますね………っ…」
「……ごめんなさい……」
落ち着いて熱を持ったこころに宿るのは、どうしようもない劣等感と後悔。
上手く愛情を受け取れない。抱いてすぐにビターに溶かしてしまう、甘味を求めているのに、歪んで取りこぼして、勝手にまた悲しくなる。
そんなどうしようもない子がわたし。必死に隠して背伸びをした中身。
嫌い。こんなわたしが大嫌い。
外で良かった。
あの人にそんなわたしを見せたくないから。
きっと、いくつかは知られている。知られているけれど、それでも多くは見せたくないから。
しあわせな姿ばかりを覚えてほしいから。
手の力が緩めば魔法は終わる。
青い光が消えて、降り注ぐ星の光と水路を流れる水の音が戻って来る。

「……しんじる…」
過ぎ去った心の動揺を思い返しながら、ぽつりと口にする。
手紙にあった文字。どうして、こんなわたしを信じられるのだろうか。
黎明の教えとカミへの崇拝なら信仰を口に出来るけれど、簡単に揺らぎやすい部分も多い子供には分からなくて。
だけど

「ちゃんと……ちゃんと…できるように…ならないと……」
あの人を壊す前にわたしが壊れてしまう。
すでに歪んではいるわたしでも、しあわせの前に壊れることだけは違う。
愛される子である、という言葉を繰り返す。
信じる。受け止める。
そんなしあわせの一歩を刻んで、いつかは正しくあの人といつまでも愛し合いたい。

「…自身の選択をかしんするべからず、歩む道がすべてただしいとはかぎらない。黎明が見えたときこそ、周囲へ目をむけよ……とばりをひらくのは……」
教えの幾つかを口にする。
何度も読み、声にして覚えた言葉。
黎明は己の中にあるもの。

「……」
すっかりと涙でぐしゃぐしゃになった顔を袖で拭う。
手紙と写真を封筒へと戻してから、持っていた本に挟んで呼吸をひとつ。
返事を書こうかとも思ったけれど、それはきっとネックレスに呟いた方がいいだろうから、また明日。
それに、いまは
まだ少し波打つこころを抑えて、愛する人に会いたい。
顔を見たら驚かせるかもしれないけれど
抱きしめてほしい
愛を口にして欲しい
熱を感じていたい
……帰ろう
あの人のところに
涙声になるかもしれないけど、ただいまがしたい。
触れてほしい。
荷物を持ち直して、子供は歩いて行った。
赤い花がちいさく散っていた。