RECORD
Eno.637 ナルシテート・スラミガル・ビビの記録
残念
勇者ラデュレは後悔している。
何年も前、幼い頃に放った失言で一匹の竜人がおかしくしてしまった事を。
助けてあげたかった。救ってあげたかった。戻してあげたかった。
何が悪かったのかはなんとなく理解している。
喪ったものの代替えを用意しようとしたのが悪かったんだろう。
例えてみるなればペットロスの相手に強引に子猫を押し付けるようなものだった。
替えにしなさい、と渡されても向こうも戸惑うし、前提として別物であると明かしていれば多少重ねてみるのも難しかろう。
「それに代替えなら死霊術師に頼んで、遺体を使うべきだったわ。魂も肉体も同一なら受け入れやすいでしょうし。
多少死臭にまみれていても、あの方ならきっと大事にしたはずよ」
穢されて亡くなった、ということは大きな肉体の破損はなかったんだろうし。
エンバーミング技術で傷だって隠せる。幼いって仕方のないことだな、とラデュレは大変申し訳なく思い恥じらった。
もっと完璧な案を用意できたし、もし死者が受け入れられないなら娘や奥方に似せて整形した耳長を使用人にでもして送り込めばよかった。
情の深い方だから、それだけできっと癒されるはずだとラデュレは考えていた。
それがどれだけ残酷な仕打ちかは分からない。共感が難しい。本気でラデュレはあの竜人に救われてほしいと思っていたし、竜人の心の傷を埋めるものを探していた。
だからこそ。
「ナルシテ―ト様が行方不明?」
「は。そうです。ここ一か月ほど休暇をとってらっしゃるようなのですが、一体どこへ行ったのか……。
話では不審な触手人と接触していたとの話でして」
「そうですか」

迷いはなかった。善心故に彼女はそういうと、立ち上がる。
勇者ラデュレ。
この世界の勇者には、人心を理解する能力がやや欠如していた。
何年も前、幼い頃に放った失言で一匹の竜人がおかしくしてしまった事を。
助けてあげたかった。救ってあげたかった。戻してあげたかった。
何が悪かったのかはなんとなく理解している。
喪ったものの代替えを用意しようとしたのが悪かったんだろう。
例えてみるなればペットロスの相手に強引に子猫を押し付けるようなものだった。
替えにしなさい、と渡されても向こうも戸惑うし、前提として別物であると明かしていれば多少重ねてみるのも難しかろう。
「それに代替えなら死霊術師に頼んで、遺体を使うべきだったわ。魂も肉体も同一なら受け入れやすいでしょうし。
多少死臭にまみれていても、あの方ならきっと大事にしたはずよ」
穢されて亡くなった、ということは大きな肉体の破損はなかったんだろうし。
エンバーミング技術で傷だって隠せる。幼いって仕方のないことだな、とラデュレは大変申し訳なく思い恥じらった。
もっと完璧な案を用意できたし、もし死者が受け入れられないなら娘や奥方に似せて整形した耳長を使用人にでもして送り込めばよかった。
情の深い方だから、それだけできっと癒されるはずだとラデュレは考えていた。
それがどれだけ残酷な仕打ちかは分からない。共感が難しい。本気でラデュレはあの竜人に救われてほしいと思っていたし、竜人の心の傷を埋めるものを探していた。
だからこそ。
「ナルシテ―ト様が行方不明?」
「は。そうです。ここ一か月ほど休暇をとってらっしゃるようなのですが、一体どこへ行ったのか……。
話では不審な触手人と接触していたとの話でして」
「そうですか」

「では私も捜索に加わりましょう」
迷いはなかった。善心故に彼女はそういうと、立ち上がる。
勇者ラデュレ。
この世界の勇者には、人心を理解する能力がやや欠如していた。