RECORD

Eno.524 シワの記録

音楽神の加護なき地にて

私はいま、フラウィウスにいる。
あなたと音楽が恋しい。
風光明媚な地だ。出不精なあなたにも見せたかった。
観光旅行で来られたのであれば最上だったものを。

どういうわけか、ここの闘技場で剣闘士として働かされている。
だれの計らいだ。迷惑……いや、困惑している。
私たちは死神ではあるが戦神ではないぞ。
しかも(案の定)マクアウィトルはないし。
ダガー黒曜石のメススピアアトラトルランスホルカンカは見た。
侵略者たちの銃と剣も。
地上を恐怖で支配する民たちの得物マチェーテ、チューボも見た。
見たことがあるだけだ。振るったことなど殆どない。
実質指南役であるウェポンマスターエスペシアリスタスは厳しい。
そこらの奴隷娘に武術を教えるかのごとく当たるならまだましなほうだ。
ルールが簡単だからと、のっけから一人前の剣闘士扱いしてくる。
それとも彼奴らの間で、私が人ではないことは暗黙の了解なのか。
2日かけてエスペシアリスタス全員から一勝を取った。
個人的にはうゐろう侍の打刀が一番対処に困った。極東の戦士、恐るべし。

乱選試合に出始めてもうすぐ300勝。(頑張っているだろう?)
ときには連敗するが、挫けてはいられぬ。
早く帰るためにも、またあのお方に馬鹿にされてしまわないためにも、
思い切りやっても相手の傷は癒してくれるというし、全知力と全力を尽くさねば。