RECORD

Eno.668 夢喰いの記録

星と微睡みの平穏の手記

……例えば人は困難に直面した時、何にすがるのでしょうか。

これは古くから多くの人々が思考して、そして気にも留めずに流し、一部の……私のような人々が何度も繰り返し調べてきた事柄のひとつです。

困難。それはそんじょそこらの不幸から、人知を超えたどうしようも無いものまで。

それを自己の責任として省みる者もいれば

それを不運として神に祈る者もいて

それを事故とし悪魔を排しようとする者もいます。


三者三葉、千差万別。細かく分ければ分けるほど、種類は増える。

しかしそれらは、困難────人知を越え、理解を越え、なにより、世界の許容量・・・・・・を越えたものというのはある。


それらは時として、世界によって、『天災ディザスター』『大変動カタクリズム』『破滅カタストロフ』『終末アポカリプス』『特異点シンギュラリティ』『起源ジェネシス』等様々な呼称をなされてきました。


そんな時、人々は何に縋るのでしょうか。

あるものは、神に縋ります

それは信仰の先に見るものが打ち払う光の剣が、眠り授ける闇の天幕かなどは些細な違いにすぎません。

あるものは、悪魔に縋ります

命を、願いを、欲望を、民を、支配者を、国を、世界を。何もかもそれに捧げることによって対価とし、代償とし、地獄しかないと分かっても手を伸ばします。

あるものは、支配者に縋ります

尊厳すら投げ打った先、自らの作り出した支配者に、ものがたりに、偶像に縋ります。たとえ奴隷になり下がろうとも。


それらがもし、本当に存在するなら・・・・・・・・・良い手かもしれません。
事実、私達のこの世界も、一度はそうして助けられました。深海の悪魔ウォルクグライドが協力した、陽月の女神ピルファリティナの手によって。


けど、今回は違いました。『それ』は人知どころではなく、世界の許容量・・・・・・を遥かに越えていました。

たったひとつで許容量を溢れさせた『それ』は、悪魔も、女神も、どうしようもありませんでした。

それでも誰だって、多少なりとも愛着や執着のある場所を喪う訳にはいかないので、数多の知恵や知識、法則がかき集められました。

その中には、太古の禁忌や未来の法則がありました。人類の結晶だってありました。










そして、それは、ソレ・・に至りました。







ソレ・・はありました。







私達は、ソレ・・を認識してしまいました





それは認識に巣食うものでしたソレは認識を糧に存在を維持するものでしたそれは存在を糧に認識するものでしたそれは許容量すら喰らう認識の喰らい手それは星と瞳の狭間から来るそれは虚無を満たしおわりに来るそれはすべてわれらのはじまりの







───────────それは、そう。
はじめから、『数多の認識』を与えてはならなかったのです。




『それ』は、間違いなく我々の望みを叶えました。

『それ』は、間違いなく我々の成せないことを成しました。

………けども、ソレが顕れた時点で詰みでした。



そしてソレは、『無貌なる眠りの星』として全てを眠りに堕とした後、「眠りなき深淵」だった私に眠りを与えて、そして、世界は星と静寂に包まれ「平穏」が訪れました




僅かに残ったあの星の残滓を利用してこの世界を旅立つ前に、もし誤ってこの世界を訪れた方の為に、パンフレットとして記録を残しておきます。
─────Volcgreed