RECORD
Eno.44 ブルーバードの記録
★10月29日、ブルーバードの夢
三途の川、というのは現代で例えれば駅なのだという。
当時は河川を使って物を運んでおり、大きな川は物流の駅のようなものだったから、だとか。
死者の旅立ちの夢は駅に関するものが多く、あの世とこの世の境目を示す時には川が出てくることが多い。
フラウィウスに来る少し前に、自分にとっての天国のような夢を繰り返し見ていた。
穏やかな川の浅瀬に、美しい熱帯魚の群れが泳ぐ夢。
私は浅く流れる水とそこを泳ぐ魚を眺めるのが好きで、とりわけグッピーのような、色鮮やかな熱帯魚が大好きだ。
白く霞がかった暖かい日差し、誰もいない穏やかな浅瀬の川、手でも掬えそうなくらいのグッピーの大群。
夢の中の世界には自分一人だけ。
どんなに魚達を眺めようと、靴を脱いで川に入ろうと、魚を手で追おうと、誰も咎める者はいない。
美しかった。
楽しかった。
目覚めた時、あまりに気分がいいから自分の死期が近いのかと考えた。
ああ、あそこが天国なのだとしたら自分は帰ってこないな、と。
そんな夢を、何度も見た。
何度も見る、ということはそれだけ自分にとって大きな意味を持つ出来事がこれから起きるということだ。
変化。
その前には決まって、その道を自分の意思で選ぶためにか、”悪い事”が起きる。
私は悪い事が起きた時には、そのエネルギーを使って新しい事を始める癖があり
飽きっぽい性格は、どんなに熱量を注いだ物事であっても一瞬で色褪せさせてくれる心強い味方だ。
フラウィウスに来る前の私は、軽んじられたり手のひらを返されたりするハードラックが、不思議なほど多発していた。
元はフラウィウスに来る予定は無く、そのまま留まって『ブルーバード』を続けるつもりでいたが……
あまりのあまりさに腹が立ち、それなら異世界を回ろう、とこうなった。
川幅は狭いが流れが急な川に、観光地めいた橋がかかっていた。
水の勢いが強すぎ、足元も悪いため川が渡れなかった私は、橋を渡って川の向こうに行き、そちら側の川岸に寄る。
川岸には腰くらいの深さの温水の池があり、1mはあろうかという見事な尾鰭を揺らめかせて泳ぐグッピー達がいた。
私は池に入り、持っていた網でそのうちの一匹を掬い……プラケースに入れてしまった。
プラケースの中のグッピーは体色が青、ウェディングドレスのように豪華な尾鰭は赤。
川の向こう岸の池にいた見事なオスのグッピーは、川の手前側にいた私のプラケースの中で泳いでいる。
―――川の向こうで、ほぼあの世のような場所で、誰かが私を呼んでいる。
渡らないで、そのまま川の向こうに行ってはダメだ。
私は貴方を連れ戻しに来た。
貴方は美しい。
朱に染まった長い尾鰭も、夜空のような蛇柄の心臓も、貴方は美しい。
命の終わりを告げる左手を、金の瞳が振り返る。
今の貴方がどう思っていようと、貴方の魂は……そこから掬い上げる誰かを待っている。
私は貴方を……此岸に連れ戻す。
それが私の役目。
それが私がここに呼ばれた理由だから。
夢が示す、貴方に伸ばす手のもう一つの意味なら、私はそれでいいと思っていた。
左手の先にいる人、それは私の運命の人なのだろう。
赤いドレスを着たグッピーは、青い鳥に捕まってしまった。
それが意味するのは、つまりそういうこと。
私が手を離したらプラケースの中のグッピーは生きていけないし、グッピーがいなかったら私も川の向こう側から帰ってこないのだ。
何せ、川の向こう側はお店がいっぱいで、温泉もあってとても楽しそうだったから。
グッピーを持っていたら帰らなければいけないけれど、グッピーがいなかったら行って楽しく遊び、もう帰る事はないでしょう。
次は穏やかに眠りたい、その夢が叶うのだから。
当時は河川を使って物を運んでおり、大きな川は物流の駅のようなものだったから、だとか。
死者の旅立ちの夢は駅に関するものが多く、あの世とこの世の境目を示す時には川が出てくることが多い。
フラウィウスに来る少し前に、自分にとっての天国のような夢を繰り返し見ていた。
穏やかな川の浅瀬に、美しい熱帯魚の群れが泳ぐ夢。
私は浅く流れる水とそこを泳ぐ魚を眺めるのが好きで、とりわけグッピーのような、色鮮やかな熱帯魚が大好きだ。
白く霞がかった暖かい日差し、誰もいない穏やかな浅瀬の川、手でも掬えそうなくらいのグッピーの大群。
夢の中の世界には自分一人だけ。
どんなに魚達を眺めようと、靴を脱いで川に入ろうと、魚を手で追おうと、誰も咎める者はいない。
美しかった。
楽しかった。
目覚めた時、あまりに気分がいいから自分の死期が近いのかと考えた。
ああ、あそこが天国なのだとしたら自分は帰ってこないな、と。
そんな夢を、何度も見た。
何度も見る、ということはそれだけ自分にとって大きな意味を持つ出来事がこれから起きるということだ。
変化。
その前には決まって、その道を自分の意思で選ぶためにか、”悪い事”が起きる。
私は悪い事が起きた時には、そのエネルギーを使って新しい事を始める癖があり
飽きっぽい性格は、どんなに熱量を注いだ物事であっても一瞬で色褪せさせてくれる心強い味方だ。
フラウィウスに来る前の私は、軽んじられたり手のひらを返されたりするハードラックが、不思議なほど多発していた。
元はフラウィウスに来る予定は無く、そのまま留まって『ブルーバード』を続けるつもりでいたが……
あまりのあまりさに腹が立ち、それなら異世界を回ろう、とこうなった。
川幅は狭いが流れが急な川に、観光地めいた橋がかかっていた。
水の勢いが強すぎ、足元も悪いため川が渡れなかった私は、橋を渡って川の向こうに行き、そちら側の川岸に寄る。
川岸には腰くらいの深さの温水の池があり、1mはあろうかという見事な尾鰭を揺らめかせて泳ぐグッピー達がいた。
私は池に入り、持っていた網でそのうちの一匹を掬い……プラケースに入れてしまった。
プラケースの中のグッピーは体色が青、ウェディングドレスのように豪華な尾鰭は赤。
川の向こう岸の池にいた見事なオスのグッピーは、川の手前側にいた私のプラケースの中で泳いでいる。
―――川の向こうで、ほぼあの世のような場所で、誰かが私を呼んでいる。
渡らないで、そのまま川の向こうに行ってはダメだ。
私は貴方を連れ戻しに来た。
貴方は美しい。
朱に染まった長い尾鰭も、夜空のような蛇柄の心臓も、貴方は美しい。
命の終わりを告げる左手を、金の瞳が振り返る。
今の貴方がどう思っていようと、貴方の魂は……そこから掬い上げる誰かを待っている。
私は貴方を……此岸に連れ戻す。
それが私の役目。
それが私がここに呼ばれた理由だから。
夢が示す、貴方に伸ばす手のもう一つの意味なら、私はそれでいいと思っていた。
左手の先にいる人、それは私の運命の人なのだろう。
赤いドレスを着たグッピーは、青い鳥に捕まってしまった。
それが意味するのは、つまりそういうこと。
私が手を離したらプラケースの中のグッピーは生きていけないし、グッピーがいなかったら私も川の向こう側から帰ってこないのだ。
何せ、川の向こう側はお店がいっぱいで、温泉もあってとても楽しそうだったから。
グッピーを持っていたら帰らなければいけないけれど、グッピーがいなかったら行って楽しく遊び、もう帰る事はないでしょう。
次は穏やかに眠りたい、その夢が叶うのだから。