RECORD
正気の糸を
「………………」
「きもちわるい……」
吐き気がひどい。寒くて、頭がくらくらする。空腹なのか、どうなのか、分からなくなってくる。
ばちばちと体の中で音がする。手足の付け根が痛い。違う、手はついてる、足はある、違う。大丈夫だ。
「……大丈夫」
言い聞かせる。
食べ物は、もらったじゃないか。食べたじゃないか。
この上お腹が減ったなどと言えるわけがない。言ってはいけない。
大丈夫、まだ生きてる、死んでない、置いていってない、手足はついてる、大丈夫だ。
「……寝、ないと」
「明日……」
静かな部屋。静かな夜。寒い。
寝ないといけない。朝が来る。約束がある。
「は……」
撫でてくれた彼女の手を思い出す。
仲睦まじい彼らの姿を思い出す。
優しげな視線を思い出す。
思い出したものが赤く染まる。
違う、幻視だ。実際は事後の物を渡されただけなのだから、当時の有様なんて見ちゃいない。
大丈夫。
大丈夫だ。
「……うぇっ、……けほっ」
痛いとか苦しいとかお腹空いたとか、自分の不快感を訴えることが怖くて怖くて堪らなかった。もう言えない、言わない、言わないように、しよう、それで少しはマシに、
本当に?
させた事は変わらないのに?
違う、変わらないから繰り返さないようにって。だから。
ちがう。
ちがう、ちがう、ちがう。ちがう。
『……。させないと思ってるんだけど』
『なってくれたら、うれしいなと思ってもいるよ』
『ふぃあーるかは、一緒にいたいから』
『一緒なら、ふぃあーるか、どっちでもいいんだぁ』
思い出す。
何を、言って。
前ならきっと口走らなかったことを言っている。
前なら絶対に言わなかったことを言っている。
どうして。ちがう。いけないことだ。分かっている。
いけないことだ。
「…………」
「ビビ……」
約束を。
『だめになったら、たすけてほしい』
朝が来る。