RECORD

Eno.134 タニムラ ミカゼの記録

 横長のプランターを買ってきた。土と共に。
 フラウィウスで借りた部屋は生憎ながらベランダはなく、窓の縁に置くしかなかったけれども。

 土を引いて置くのは、萎びて枯れだした花たち。
 ―― 君は、循環すると言っていた。ならば、枯れた花たちも土に還して、君の花が結んだ種を植えようと思うんだ。そうすれば、また花束が出来るだろう?

 土葬でもするかのように、花だったものたちに土を被せていく。微生物の多い土をにしたんだ、小さき物たちに分解を任せる。

 ただ、フッと思いついて。
 土の中から3本ほど掴み上げる。

 もっと広い所にも行きたいよな。
 海に流されたり、風に流されてみたり。


 君が死んで、一ヶ月になろうとしている。
 不意に泣いたりはしなくなった。日常の中に戻って、当たり前の毎日を過ごしている。

 花だって、大事にしないですぐ捨てて、忘れたら良いのにって。君は言ったりするのかな。違うかな。
 君を覚えているのに、君の思いそうな事が段々分からなくなってくる。自分の考えの一つな気さえする。

 非情だよな。あんなに愛してるって言ったのに、君のことが段々分からなくなってくる。
 君の居た世界から遠ざかっていく。

 君を忘れたくなくて、記憶に縋りたくなる。

 ああ、そうか。忘れたら良いのにじゃなくて――
 前に進んで、か。

 頭の中で、君を寝付かせる。
 人から聞いたんだ。天国は生きてる人の頭の中にしか無いって。
 君の部屋と、夜に浮かぶ月と、波の音。花は十分あるからあえて置かない、そんな天国。

 君の好きだった物の中で、安らかで綺麗な君を寝かせる。
 こんなの現実じゃないって、空想が嫌いだからって飛び起きないでね。
 ずっと覚え続けるだけって、苦しいんだ。

 アリィー。君がこの天国にずっと居られるように。

 今日も生きている。