RECORD

Eno.44 ブルーバードの記録

◆11月1日、雪の日記

リーには帰る世界がない。
じゃあアタシにあるかっていうと……半分。
迎えてくれる人は誰もいねーけど、帰る世界だけはあるって感じ。
ブルーバードの体は、切原雪きりはら せつの二十歳の状態で止まってる。
そっから20年は経ってるからなー……当然、家族には会えないわけだ。
まああんま、会いたくもねーけど。

……姫様だった時の父上は愛情深く素晴らしい人だった。
今生の父親は……うーんカス。母親はアル中。
父親の暴力は反撃した時流血させたことがあって、そっから無くなったけどまあ、もう思い出す必要もないかなって感じ。

今生のアタシは親の愛に恵まれなくて……姫様だった時と同じモノは得られなかった。
アタシの尖った特性は嫌われたし、なんかの才能と誤解されて母親にはアクセサリーとして振り回された。
見目もまあ、あの両親から出てきた割には悪くはなかったし。
でもさ、切原の家はみんなパンピーっつかクソ普通の人間でさ、そーゆー……変な奴、ある種のギフテッドの扱い方がわかんなかったんだ。

ギフテッドってのはさ、まあ発達の凸凹だよ。
凸があれば凹もある。
それをさ、わかってなかったんだよ。
子供ん時はさ、なんで全てが凸じゃない?なんで人より劣る凹がある?って怒られて
大人になれば人より出来が良い部分、アタシが頑張ったことの手柄は全部親が持っていっちゃって……まあ横取りだよね。
いーーーーーーーーーーーっつも誰かにいいように使われてばっかで、心がカラカラに乾いてた。



リーはさ、あいつもさ、多分ギフテッドなんだよ。
あいつ、羨ましがんないんだよ、他人のこと。
誰かの足引っ張るんじゃなくって、努力で自分を押し上げればどうにかなるって信じてるし、それで今までどうにかしてきた。
あー見えて毎日トレーニングしてる。

あいつがさー、病気で潰れちゃうんじゃなくてさ、もう後ろ暗い仕事しなくていいってなって
病気もそこそこいい感じになってさ……
これがやってみてーな、ってこと見つけてくれたらさ、アタシそれすげーエモいなって思うよ。