RECORD

Eno.673 フィアールカの記録

国喰らい

春の国スメルバの調査隊が冬の国ウェルクに到着したのは、国が呑み込まれてから二週間後のことだった。
冬の雪や嵐は彼らの足取りをひどく阻んだのだ。

黒い帳に覆われた地に、動く者はいなかった。
ただ一人、ぽつんと手足の無い少女が存在していた。

おかぁさん


音なしの声が響く。

おかぁさん、どこ?


国中を呑み込み探したって、欺瞞と嘘の証があるばかりで、母の痕跡も残骸も見つからなかった。

おかぁさんを、どこにやったの


詰問だった。
問いを火花に、国喰らいの化け物と調査隊の戦闘が開始された。

朝が来た。何時もの朝ではない朝が。
誰が死んでも世界は回る。
思い出は塗り潰されこの世は地獄。
生きたとしても彼らに二度と会うことはない。

時計の針は止まらない。
今日も回っている。