RECORD

Eno.563 一つ目の蜻蛉の記録

薄翅:再見

アルバイトを探していた。
そりゃ当然ファイトマネーだけで暮らしてはいける、けど。
ここに永住したいと願った以上、もっとこの世界や社会について知らなければならない。

だけれど色んなお店を回ったものの、異世界出身の僕をそうそう雇ってくれるところはない。
今日も一件応募に落ちた。お祈りというやつ。

溜息が漏れる。
海に向かう大通り。右も左もおしゃれなお店が立ち並んで、たくさんの人が行き交って。
大きなアレーナのことはどこからでも見える。

闘技の世界フラウィウス。
でも戦いに関係ない日常を過ごす人たちもたくさんいて、戦いも娯楽としてすぐそばにあって。

僕はここで生きていくと決めたから。
親や世話になったものに別れを告げたから。
友との思い出があるから。

この世界の自然な一員になりたいと、そう思ったんじゃないか。
溜息ばかりじゃ、また逃してしまう。

よし、今日はカフェでちょっと贅沢しながら次を探そう。
美味しいサンドイッチとコーヒーで、通りを眺めながらまったりして。
また明日から、時間はたくさんあるし、また明日──。

「テメェだな、闘技者のくせにバイト探してるってのは」

後ろから声をかけられる。

「え、はい。僕に何か用で──」





僕は今生最大の悲鳴を上げた。




To Be Continuerd!