RECORD

Eno.134 タニムラ ミカゼの記録

×

 四南シナンから連絡が入った。
 先日撮ったという、八愛ヤアイの7歳誕生日写真。8人兄弟と両親の大家族だ、ほぼ毎月誕生日があって珍しくもない。

 ただ、羅夢須ラムズ兄さんと五奈イツナが隣あって、一方的にイツナの身体を触っている様に見えて。

 気分が悪い。
 ただ、シナンとの通話は終わってなかったから、どうにか堪えて。

 聞きたかった話を聞く。

「…………なあ、イツナはいつ堕ろすんだ?」

『堕ろさないって』
 目を見開く。

『例え障害があっても育てたいってさ』
 唖然とする。

『ラムズ兄さんがそう言ったからって』
 拳を、机に振り下ろす。

 ペンで囲ってたビー玉が跳ねて、転がり落ちる。

「ふざけるなよ、働きもしないクズが!」

 ようやく母が子を産めなくなって、これ以上首を絞められる事はないと思ってたのに。
 今度は身内で、しかも兄妹で。
 イツナはまだ15歳だ。兄からの手を断りきれず、自分で判断も出来ず、言いなりの様になってるのだろう。
 何が障害があっても良いだ。その障害を持ってしても、生きていける為に必要な金はどこから出す気だ。

 俺はお前たちの快楽の為に働かされてるのか!?

 イツナに虐待で訴えろ、と怒鳴った。
 そんな金は無いし、家族を散らせるの? とシナンは苦しみながら言った。

 結局、コレなのだ。他に拠り所もない、底辺の家族だ。

『みんな、新しい家族が増えるって――』

 一方的に通信を切る。
 続く言葉なんて聞きたくない。

 何で父も母も止めてくれないんだ。
 おかしな事をしてるのは兄の方だろう?
 それよりも金を浪費する命の方が大事だっていうのか?

 イカれてるのは俺なのか?
 人を殺して金を得て。クローン達に囲まれて簡単に命が散っていく。
 人の命を無駄にした俺のなのか?

 だったらそれで食えてる家族お前らだって同罪だろ。
 なのに何で愛した人が生きられなくて、狂った命が生き続けないといけないんだよ。

 頭を抱えて、掻いて、掻いて。
 溜息を吐いて、落ちたビー玉を拾い上げる。

 そんなの空想だ。的外れだ。そうだろう。
 現実はどう足掻いても現実なんだ。

 ただ話しただけなのに、酷く疲れた。
 気分も悪い。吐いてこよう。

 人の性が怖い。
 人の性が嫌いだ。

 アリィー。君を好きになれたのは奇跡みたいなものだったな。