RECORD

Eno.232 シャルティオ&キィランの記録

4 “強くなりたい”

 出来損ないの不能者は、元が出来損ないだから、
 周りよりももっとずっと
 努力しなくちゃならないんだって。

 血反吐を吐いても
 闘うことを諦めちゃ駄目なんだって。
 出来損ないだから、
 弱音を吐いちゃいけないんだって。

 だから僕は、何度も、何度でも。

「……刃を振るって、闘って」



 痛いとか苦しいとか、言っちゃ駄目なんだ。
 倒れても立ち上がり続けなくちゃ駄目なんだ。
 動けないなんて言い訳にしかならないんだ。
 藻掻いて、足掻いて、手を伸ばして。

「……おかあ、さ、ん」



 どうしたらあなたは僕を認めてくれるの。
 お父さんは物心つく前に死んじゃった。
 僕の親は、お母さんしかいないのに。

 認めてよ、愛してよ!
 僕はこんなに頑張ってるのに。
 まだ頑張りが足りないのかな。
 僕はどうすればお母さんに愛して貰えるのかな。

 涙なんて流さない。
 こぼれ落ちるそれは、空気に触れれば毒となり、
 僕の肌を灼いてしまうから。

「……強く、なりたいん、だ」



 身体が悲鳴を上げても、
 無視して刃を構えて、振って、ひたすらに。
 届きたい、認められたい、愛されたい!
 それだけ、なのに──

 渇望のようなそれが、
 いつか癒える日は来るのでしょうか。
 徒花が咲く日は、来るのでしょうか。

──認めたくないから、目を逸らした。
──決して満たされないなんてこと、
──心の端には上らせない。


  ◇

 兄さんみたいになりたかった。
 兄さんは、いつだって楽しそうなんだ。
 こんな醜い感情、抱えることもないんだろう。

 羨ましくて、憎らしくて、
 ますます自分が嫌いになって。

 悪い子は僕なのに。
 優しい兄さんを拒絶しては、
 いつも自己嫌悪に駆られていた。