RECORD

Eno.197 藤堂 丹の記録

欲しがったのは結局誰だったのかって話


とどのつまり。
異世界というのは、異なる世界の話であって。
俺の世界の話、という事ではないのだろう。

シャーペンをくるりと回して、ノックした。

かちり。


日常に戻るのはなんだかんだと難もなく、精々以前のようにいなくなって多少お説教を喰らったくらい。
それだって二度目だから、一度目ほどじゃなかった。

教師の声を耳にしながら、黒板を眺める。

要点だけを教科書に書き込んだ。
つまらない惰性の繰り返し。一度読んだし、内容は目新しくもない。


退屈だった。

「藤堂~」


「はいはい~」


小声で呼ばれて、芯の引っ込んだペン先で背中をつつかれる。
教師にばれない程度の音量で返事をして、視線をやった。
同級生。男。ノリが軽くてつるんでいて丁度いいやつ。
名前は田宮成彦。あだ名はたっちゃん。

アボカドは、学校では名乗っていない。


普通の日常というのは、恐らく大体はこういうものの事を言うのだろう。
当たり前に享受しているもので、何もなければそのまま続くものだ。

正直に言おう。別に行くつもりも持ち帰るつもりもなかった。
どれだけ仲を深めようが、執着をし合おうが、許容しようが。
一線を越えるつもりは毛頭なく、結局はそれを貫徹した。


日常を退屈と評しながらも良しとしたし、異世界など行ったところでどうすると言うのか。
後ろ盾もなしに生きていけるほど甘くもないだろうし、後ろ盾をさせるわけにもいかない。
連れ帰る? 自分ではまだ稼げもしない癖に? 責を負うのは両親で、自分ではないのだ。その場合。


およそ中途半端に手を出して、相手から責任を追及されないのをいい事に、子供に飴玉を与えるように甘やかして味を覚えさせた。
結局はそういう話で、それを知る者は此処にはいない。


日常が続く。
何もかもを置き去りに。
数年経てば、記憶は徐々に朧気になるに違いない。
忘れられない鮮烈な記憶はいつだって真白く灼ける視界と共にあり、どうしたってそれ以外は薄れていく。

俺は人間だから、成長もすれば風化もする。
永遠はない。体温がなくなった物寂しささえ時間が癒して、すぐに慣れる。
惰性。刺激がなければ刻み続ける事さえ出来ない。

それを良しとした。そんなものだ、何もかも。

肩には見えない鳥が在る。