RECORD

Eno.134 タニムラ ミカゼの記録

業務日誌
 谷村 三風


 ああ。忌々しい季節だよ、まったく。
 100年前は温暖化が騒がれてたって本当か? 少しはその気温分けてくれよ。

 フラウィウスはまだ温かいのにな。 花の世話は怠ってはいないが、どうにもこの季節は忙しない。

 忙しい方が、後ろに引っ張られる感覚がなくていいのは―― 否定できない。
 君が死んで2ヶ月になる事実は変わらないのに。

「第五回 ウッドカット周囲の除雪を始める」



 もう五回目なのも飽きれてくる。この前もしっかり雪を降ろした。そんな俺たちを嘲笑うように、鈍色の空から大きな塊の雪が降り注ぐんだ。

 集まった仲間クローン達も飽きたと言わんばかりに呆れ声。

「城石市に居たときはそんな事しなかったのに」
「城石は都会だからなー。こんなド田舎じゃ天候管理なんてしないさ」
「劣化使ってさっさと終わらせようよー」
「ダメダメ。ウッドカットココでは劣化は厳禁。荒仕事の時だけだよ」

「そもそも、劣化使えない真人間と木偶の坊が仕切ってるわけだし」

「あ?ミカゼ真人間木偶の坊の事かよ」


「行くな行くな。
 無駄口を叩く暇あるなら指示を聞け」

 

 除雪シャベルを地面に叩いて話を止める。こうでもしないと話が進まん。

「というワケで、手ぇ動かせ!
 馬車馬の如く働けぇ!全力で働けぇ!
 1時間毎に身体温めて昼休憩にはあったかい飯喰って日が沈む16時には撤退だぞ!」


じゃないとミカゼチビが雪に沈むからな!


「………………」



 聴劣化は俺より頭1個分大きい。だが、背中の金属の腕を使えば身長差など気にならないものだ。
 首根っこ摑んで、雪山に放り込んでおいた。

「巡回班は家主に声を掛けて、除雪の助力が必要か聞いて回ること。以上。開始」



 3人程のグループに分かれ、分担作業に移っていく。余り組である自分と聴劣化は屋根の雪下ろしだ。
 魔導クローンは5年も保てば良い方で、4年目にもなれば年長者は自分と聴劣化くらいしか居ない。自然な流れで一番厄介な役割を充てられてしまった。

「いつまで雪の中に居るんだよ」



 投げたのは自分だが、何故か聴劣化が雪山から出てこない。仕方なく長い脚を摑んで引っ張り出せば、聴劣化が眉間に皺を寄せて片耳を指差している。

 聴劣化は、聴力を代償に『波』を操るという。この聴劣化は、自分と出会った頃にはもう既に聴力を失った状態で、補聴器がなければまったく音が聞こえない。
 代償が払えなければ劣化も使えない。身長も態度もデカイが、魔導クローンとしての存在意義はもうない。

 聴劣化の示した片耳には、補聴器がなかった。

「………悪かったって。俺も探すよ」



 流石に大事な物を失くさせてしまったのは気が引ける。一言も喋らなくなった聴劣化と共に無言のまま雪山を掻き分けた。