RECORD

Eno.255 Siana Lanusの記録

ある聖職者の言葉 1



汝、“今”を愛しなさい


「この世は、創壁神が我々を混沌から救いあげられた故に在るのです。
 そのことを神に感謝し、神の創りし箱庭を護り維持する事こそ、神に創られた我々のさだめ」


「多くを望まず、今を愛しなさい。
 さすれば平穏と安寧が、貴方には約束されましょう」





*

────あたしたちの世界は、創壁神の創った箱庭だ。
創壁神は混沌の海からあたしたち人間を護るべく壁を創り、
その壁のお陰であたしたちは混沌に呑まれる事無く暮らせている。

それはあたしたちの世界で語られる創世神話であり、常識だ。
境会の言うとおりに“今”を守れば、天の遣いから奇跡を授かる事すらある。


“今”を護る事は、この世では正しい事とされている。
神がそれを推奨しているのだ。それで、人が停滞に侵されても。
無知を、惰性を、無力を、神が肯定している。





「……だから。
 それが緩やかな自殺であることに、大衆は気付かない」


流れなく変化が乏しくなったせいで
 世界が淀んでいることに、誰も」