RECORD

Eno.313 エヴァム・リリスの記録

2 僕のリリス

 リリスは天使だ。少なくとも僕にとっては、あの子は僕の天使だった。

「リリス。リリス、リリス、僕の天使」

 リリスのことを想うと僕の胸は喜びと悲しみでいっぱいになる。胸が苦しくて、だけど幸せで。
 いつもそばにいたいと思っていたから、僕はたくさん勉強をした。リリスの隣にいても、恥ずかしくない人間になりたかったから。

「リリス。君のために、僕はなんだってできるんだよ」
「本当?」
「うん。本当だよ」

 リリスは嬉しそうに目を細くさせて、それから、内緒話をするような小さな声で薄い唇を開いた。

「じゃあね、わたし、ずっと一緒にいたいひとがいるんだ」

 僕はリリスがそんなことを言うなんて思わなかったから、少し驚いて、だけど同時にたまらなかった。僕の胸はドキドキと高鳴って、顔は熱を帯びたように熱くなる。

「それは誰?」
 そう尋ねると、リリスは黙って首を横に振った。
「ど、どうして?」
「……だって、恥ずかしいでしょ」

 リリスはそう言って、唇を尖らせたた。かわいいな、と思う。その赤い頬に手を伸ばしたい衝動に駆られるけど。それをなんとか我慢して、代わりに笑顔を作ってみせた。

「大丈夫だよ。君だけは特別だから」

 そう言うと、リリスも同じように笑ってくれた。そして僕の手を握ると、少し照れたように目を伏せたあと、顔を上げて、まっすぐに僕の目を覗き込んだ。

「じゃあね、約束して」
「うん」
「ずっと────って。絶対に破ったりしないって」
「もちろんだよ」

 リリスは嬉しそうに笑ってくれた。その笑顔を見ているだけで、僕は胸がいっぱいになって、泣きたいような気持ちになる。

「きみが好き」

 ああ、リリス。君はやっぱり天使だ。僕だけの天使だ。君のためならなんでもできる。なんだってできるんだ。


 ◆◆◆


 リリスは独りになると、自分の白い手足を見つめた。

「飽きたな」

 そう呟いて、ベッドから起き上がる。背の低いリリスでは届かない位置にある窓を見上げた。

「明日には出よっと」