RECORD

Eno.524 シワの記録

愛なき極北の旅路を思う

フラウィウスにたった一人流れ着き、剣闘士として働くほかないと知った時、
真っ先に生まれたころのことを思い出した。
太陽から遠き暗闇のなかにいつの間にか生じて、
当て所なく彷徨った辛い日々のことを。
あなたが私を探し当てなければ、
私はいつか冥府の暗闇に溶け、虚無と成り果てていただろう。

…剣闘士暮らしは、結局、その時ほど辛くはないことがわかった。
酒も楽しめるし、顔馴染みの仲間イクニウトリも増えてきているからだ。
我らがメヒコに、我らが領土冥府に招きたい者もいる。
元々住んでいた世界も理も違うだろうから叶いはしないだろうが。

いつあなたの元に帰ることが許されるのだろう。
話したい武勇伝が沢山あるのだぞ。

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