RECORD

Eno.9 ウサの記録

北辰の剣


"雨あられ雪や氷とへだつれど とけては同じ谷川の水"――

何度挑めど勝てない兄がいた。
幾度挑めど勝てない師匠がいた。

負けず嫌いを拗らせて、負ける度に鍛錬を重ねて。
そうして、努力だけで全てを打ち負かした挙げ句。

「お前は強くなりすぎた」

「お前の剣は、人を殺す剣だ」

私に負けた奴らは、皆そう吐いて消えた。
私は幾度となく負けたのに、あいつらはただの一度と負けた程度で?

私の心は燻り続ける。

私はまだ強くなれる。
私はまだ負け足りない。

そう思い至れば海を渡り、それから数多の斬り合いを下して。
時には用心棒なんかもやってみたりして。

ある時、一通の招待状を拾った。


『負けたがりのあなたに、最高の舞台を用意してあげましょう』


手紙に興味を示せば、路地は揺らぎ石組みの街へと変貌していて。


「……そーして、闘技場《アレーナ》にたどり着いたって訳だ」


「ま、人生いろいろあるわな」




"とけては同じ谷川の水"――


私がやがて至る、海は何処に。