RECORD
Eno.105 マリン・ペリドットの記録
「おい」
「お前」
「ペリドット」
「はい、なんでしょうか不死様」
そうこうすれば不死様に引き取られて満月が1回巡り、2回巡り、10回巡り。
私は不死様に引き取られた頃よりもすっかりと『従順』な『血袋』になっていた。
或いは、『人形』か。羽ばたく事を諦めた『籠の中の鳥』か。
最初と比べれば不死様も名前を呼び、そうしてそれがどの時間帯と月の巡りかで
大体の用事や言いつけ、熟さねばならない仕事は何なのか――自分でも驚くほど――素直に
熟せるようになってしまっていた。
最初は『不死者たる上位存在に仕えるなら綺麗な字を書け』と。
不死様はその気性の粗さと粗暴さに似合わず、魔術の研究が好きな女傑でもあった。
はじめて館の書庫に通された時は蔵書の量に目を丸くしたけれど、書店や図書館に比べれば
こんなのは氷山の一角だ、と鼻で笑っていた不死様は毎日……。
一日の最後、不死者としては太陽が昇る頃合いに様子を見に来てその日の文字を見てくれた。
最初はそれこそ乱暴に教えられたものの、数を重ねるごとに気性の粗さはそのままに
しっかりと褒めてくれたりもした。
そうしてすっかり文字を綺麗に書けるようになれば、次は『館の掃除』。
率なく綺麗に部屋を片付ければ、次は『食事』の準備。
不死様の舌を唸らせられる血を与えられれば、何かを熟せば、色々と教えてくれる。
……不思議と、その時間は辛くなくて。
自分を見てくれているのだと自覚していたから嫌な感情は一切沸かなかった。
だけれど、それから何度目かの『食事』の時、私は不死様の『寵愛』が、
何時からだろう?
不死様に首筋へと牙を突き立てられる事に、血を捧げる事に美徳を感じ始めたのは。
……自分では抗えない、吸血という暴力的な『薬』は、私を狂わせ始めていた。
それに気付いてしまったのは、たまたま不死様が数日間館を留守にした時の事だった。
『カンラン石の少女』Ⅲ
「おい」
「お前」
「ペリドット」
「はい、なんでしょうか不死様」
そうこうすれば不死様に引き取られて満月が1回巡り、2回巡り、10回巡り。
私は不死様に引き取られた頃よりもすっかりと『従順』な『血袋』になっていた。
或いは、『人形』か。羽ばたく事を諦めた『籠の中の鳥』か。
最初と比べれば不死様も名前を呼び、そうしてそれがどの時間帯と月の巡りかで
大体の用事や言いつけ、熟さねばならない仕事は何なのか――自分でも驚くほど――素直に
熟せるようになってしまっていた。
最初は『不死者たる上位存在に仕えるなら綺麗な字を書け』と。
不死様はその気性の粗さと粗暴さに似合わず、魔術の研究が好きな女傑でもあった。
はじめて館の書庫に通された時は蔵書の量に目を丸くしたけれど、書店や図書館に比べれば
こんなのは氷山の一角だ、と鼻で笑っていた不死様は毎日……。
一日の最後、不死者としては太陽が昇る頃合いに様子を見に来てその日の文字を見てくれた。
最初はそれこそ乱暴に教えられたものの、数を重ねるごとに気性の粗さはそのままに
しっかりと褒めてくれたりもした。
そうしてすっかり文字を綺麗に書けるようになれば、次は『館の掃除』。
率なく綺麗に部屋を片付ければ、次は『食事』の準備。
不死様の舌を唸らせられる血を与えられれば、何かを熟せば、色々と教えてくれる。
……不思議と、その時間は辛くなくて。
自分を見てくれているのだと自覚していたから嫌な感情は一切沸かなかった。
だけれど、それから何度目かの『食事』の時、私は不死様の『寵愛』が、
何時からだろう?
不死様に首筋へと牙を突き立てられる事に、血を捧げる事に美徳を感じ始めたのは。
……自分では抗えない、吸血という暴力的な『薬』は、私を狂わせ始めていた。
それに気付いてしまったのは、たまたま不死様が数日間館を留守にした時の事だった。