RECORD
Eno.234 ノア・イトゥドノットの記録
執行者
昔々、ある街で一人の男が居た
彼は法に、課せられた任務に基づき
そして深い信仰を胸に
重い罪を犯した罪人を処罰する執行者の役割を担っていた
彼が住む街では当時、『魔女狩り』というものが存在していた
『魔術を使ったと疑われる者』や『痣や黒子といった人とは違う証を有する者』に裁判を掛け制裁を加えたりするとそういったものを指す
制裁や処刑が成される様を見た観衆が安寧を得られる様に広まった『異端狩り』である
ある日、彼は1人の『魔女』に対する処刑を命じられた
彼は何時も通りに広場にて粛々と刑を執り行う
其を行う事で何時ものように人々に安寧が来ることを信じて
唯々、純粋に人々の平穏を願って宛がわれ続けた職務をこなし続ける
彼は所謂、此の行為が善であると信じていたそんな人間であった
処刑されていった魔女達が実は無辜の存在であるなど知らなかったし疑わなかった、そんな1人の人間だった
しかし、処刑当日に状況は一変し
彼の人生は大きく狂うことになる――
刑が執行される予定の魔女は『真の魔女』であった
『罪なき者達を殺めた報いを与えるために』
敢えて捕まる事で大衆達の居る広場に潜り込んだのだ
彼女は広場に居た大衆の命を奪い、街を恐怖と混乱へと陥れ一夜にしてその街を滅ぼす事となる
だが処刑人である彼は、彼だけは『そうならなかった』
魔女は彼に1つの呪いをかけた
永遠に老いる事なく生き続けなければならない、そんな不死の呪いを
彼が知らず知らずに奪った魔女とされた無辜の命の分や魔女が奪った愚かな罪人達の命の分も背負って生き続けなければならない
その日から彼は死なずの者として
課された呪いと過ち、信じていたものに裏切られた苦しみに苛まれながら長い刻を生きていく事となる
その人生が彼の精神や記憶を歪ませ、変容させるのは実に容易かった
彼は長い刻の中で自分と言うものが分からなくなるようになってしまう
精神や記憶を保てるだけの精神力など処刑人とは言え1人の人間が到底持てる訳がない
故に
"処刑人"
長きに渡り生きて記憶も次第に忘れゆく最中
彼は無意識からか、自らをそう『定義』した
定義した其れ、その在り方以外を放棄したのだ
呪いをかけた魔女がそれを想定していたかどうかは定かではなかったが
名と在り方を個と定めた彼は執行者及び処刑人としての個に縋りながら今日も生きていく...
彼は法に、課せられた任務に基づき
そして深い信仰を胸に
重い罪を犯した罪人を処罰する執行者の役割を担っていた
彼が住む街では当時、『魔女狩り』というものが存在していた
『魔術を使ったと疑われる者』や『痣や黒子といった人とは違う証を有する者』に裁判を掛け制裁を加えたりするとそういったものを指す
制裁や処刑が成される様を見た観衆が安寧を得られる様に広まった『異端狩り』である
ある日、彼は1人の『魔女』に対する処刑を命じられた
彼は何時も通りに広場にて粛々と刑を執り行う
其を行う事で何時ものように人々に安寧が来ることを信じて
唯々、純粋に人々の平穏を願って宛がわれ続けた職務をこなし続ける
彼は所謂、此の行為が善であると信じていたそんな人間であった
処刑されていった魔女達が実は無辜の存在であるなど知らなかったし疑わなかった、そんな1人の人間だった
しかし、処刑当日に状況は一変し
彼の人生は大きく狂うことになる――
刑が執行される予定の魔女は『真の魔女』であった
『罪なき者達を殺めた報いを与えるために』
敢えて捕まる事で大衆達の居る広場に潜り込んだのだ
彼女は広場に居た大衆の命を奪い、街を恐怖と混乱へと陥れ一夜にしてその街を滅ぼす事となる
だが処刑人である彼は、彼だけは『そうならなかった』
魔女は彼に1つの呪いをかけた
永遠に老いる事なく生き続けなければならない、そんな不死の呪いを
彼が知らず知らずに奪った魔女とされた無辜の命の分や魔女が奪った愚かな罪人達の命の分も背負って生き続けなければならない
その日から彼は死なずの者として
課された呪いと過ち、信じていたものに裏切られた苦しみに苛まれながら長い刻を生きていく事となる
その人生が彼の精神や記憶を歪ませ、変容させるのは実に容易かった
彼は長い刻の中で自分と言うものが分からなくなるようになってしまう
精神や記憶を保てるだけの精神力など処刑人とは言え1人の人間が到底持てる訳がない
故に
"処刑人"
長きに渡り生きて記憶も次第に忘れゆく最中
彼は無意識からか、自らをそう『定義』した
定義した其れ、その在り方以外を放棄したのだ
呪いをかけた魔女がそれを想定していたかどうかは定かではなかったが
名と在り方を個と定めた彼は執行者及び処刑人としての個に縋りながら今日も生きていく...