RECORD

Eno.492 レオンの記録

ここに来る直前のこと

『講義サボるなんてレオンらしくないじゃん、どうしたの』

「なんとなく……ちょっともやもやしたから絵を完成させようかと思って」

『あー、あるある。なんかよく分からんけどわーってなってもやーってなるやつ。
 でもせっかくセルエモ芸術大学なんてイイトコに入ったんだから、ジュギョーリョーが無駄になるんじゃないの? あたし大学行ってないから知んないけど」

「シドはセルエモに行くつもりではあったんでしょう?」

『親父がこういうのを許さないから。キャンバスにだけかじりついて油絵や絵画を描けって言われてもノらないし』

「……」

『別にキャンバスか壁かの違いで、塗料の配合の僅かな違いじゃん?親父が好きな古典美術の壁画みたいなもんじゃんよって』

「だから反発して家出してる……シドの妹もセルエモだよね」

『んー、推薦でデザイン学科だって。造形芸術って名目だけどアイツが作りたいの服飾とかだよ、ズル賢いよなー』

「もしお父さんと上手くいってたら、こうしてサボったら会えるくらいつるむこともなかったのかな」

『さあ知んない。大学がなんか思ったのと違うなってなったら来てたかもしれないし』

「……なんか思ってたのと、違う」

『レオンはなんか違うなーって感じで迷ってるん?』

「……そうかも。色々迷ってるから、迷走してる」

『煙草ヤって酒ヤって、こうしてサボったり私有地ででっかい絵を描いたり』

「前から興味はあった。
 でも私はシドみたいに明確にこうしたいとか、そういうのがないから」

『グラフィティアートをやりたいんでしょ、正確には現代美術? 課題で作ってたモザイクアートとか、タグとか良かったじゃん』

「じゃあ、大学にいるよりは、こうしてストリートで絵を描くだけで充分……」

『だから良いモン作ってても売れないんじゃね』

「……」

『ホラ、書き手の作りたいモノと、観客の見たいモノは違うって言うじゃん。あたしみたいに反発と自己満で描いてるならそれでいいけど、そうじゃないんでしょ』

「……」

『なんか違うって思ったままダラダラやってても、成績は取れるいいこちゃんなだけじゃん。
 ここら一帯のヒヨッコの世話焼いてくれてる成績優秀な不良なんてカッコ付かないけど、それがレオンのイイトコなわけでさ』

『半端にワルぶったり優しくしてたら苦労するよ、たぶん。自称芸術家あたしらはネジ飛んでる方がそれらしいんだから』

「……一つの意見として、参考にしておく」

『ヨシ、じゃああとは肩車してこの高いところを……おっとヤバい。
 ここらの私有地のボスが来た。逃げるぞレオン』

「え、あ……ちょっと待って」