RECORD

Eno.232 シャルティオ&キィランの記録

2 穢れた王子

 僕の故郷、アンディルーヴ魔導王国は厳しいところだ。
 属性魔法が使えない人は、良い風には見られないんだって。
 属性魔法が使えることが、当たり前なんだって。
 ご先祖様が、とても優秀な魔導士だったから──

「……毒しか使えない、僕は」



 毒は属性魔法じゃないから。
 魔導王国の王子として生まれたくせに、
 僕が持つは醜いそれで。

 いつも蔑まれてきた、いつも嗤われてきた。
 僕は出来損ないなんだって、
 だから愛されなくて当然なんだって。
 僕は弱いから、虐げられて当然なんだって。

「……強く、なりたい、よ」



 ナイフを握り締めた。
 弱いから虐げられるというのなら、
 強くなれば認められるでしょうか?

 天才と呼ばれた兄さんを超えられたのなら、
 母さんは僕を見てくれるかな。

 青空に手を伸ばした。僕は空を飛びたかった。
 強さへの想いは、渇望のように。
 血を吐いても、地に倒れても。
 刃が届くのなら、届かせて。

「……示したかったんだ」



 闘うことは、僕が僕であることの存在証明だ。

──────

 毒の血が暴れて、なくなったはずの左脚が痛んだ。