RECORD

Eno.3 マイリーの記録

Dear Miley(6)

――森で声を掛けなければ。学校での様子を知らなければ。
家まで様子を見に行こうとしなければ。
そもそも生者を羨むなんて傲慢な事を思わなければ。後悔はいくらでも見つかる。
ごめんな、御嬢。オレは御嬢にとって本当の意味で悪霊でしか無いんだ。


子供の様子が気掛かりとなり、その様子を伺う日々が続いていた。
そんな毎日を過ごしていた時にそれは起きてしまった。

窓から少し離れたいつもの位置、今までは下ばかり向いていたから
気がつく事の無かった子供は、ふとした拍子に目線をこちらに向けた。
オレの大きなひとつ目と子供の小さな双眸が重なった。

「あ! マイリーのともだちが来てる! パパ、ママ。マイリーのともだち呼んでいい?」

二人は困ったような表情を浮かべ、ただただ子供の心配をするばかりであった。
返事をする事も無く、落ち着かない様子で目を逸らした。

「……ねぇ、こっちにきてマイリーとお話しよう!?
 マイリーともだちを家に呼ぶのはじめて!」

子供は無視をされたと思ったようで、構わず家に入って来るようにと言った。
このまま言うことを聞かなければ、子供はその孤独な世界で全てから居ない事にされてしまう。
窓を抜けて子供の元へと寄った後、その両親を見て様子をうかがう。
子供の言う友達が見えない二人は、時折ちらりと子供へ目を向けては視線を落とすばかりであった。

「マイリーのともだちきてくれたよ! パパ、ママ……?」

返事はない。オレは子供の気を紛らわせるために何か言おうとした。
だが、それより少しだけ早く。子供が口を開いた。

「……せっかく家にきてくれたのに」

「はじめてともだちがきてくれたのに……マイリーいないの?」

「マイリーのともだち。ここにいるのに……マイリーもここにいるのに!」

「ぜんぶ! ぜんぶ見えたらいいのに!
 パパにもママにも、がっこうの人たちにも、みんなにもぜんぶ!」


子供は普段から我慢していたモノをぶつける。やり場のない想いが爆発した。
それは子供の見えるだけであった力を大きく、恐ろしいモノへと変貌させた。

痛みなど感じるハズの無いオレの体が、内側から酷く焼けるような感覚に陥る。
まるで臓器の一つ一つが突然燃え始めたような、口から熱した棒をねじ込まれたような。
抗い難い痛みにオレは虚空をのたうち回る。

それがどれだけ続いたのかは分からない。
ほんの数秒の事だったようにも思えるし、数十分ほどの事だったようにも思える。
傍らには声を張り上げながら心配する子供の姿が見えた。

フッとその痛みが消える。間を置かずに悲鳴が聞こえた。
その声は子供とは逆の方角……オレは痛みが無くなり自由になった体をそちらに向けた。


子供の両親と目が合った。