RECORD

Eno.191 ルシアン・ブラックの記録

事実

閑静な村だった。
老人と子供ばかりで、自給自足で十分暮らせる村。
春から秋にかけて食糧を備蓄して、冬は雪を耐え忍びながら
蓄えを分け合って生き抜いていく。
雪が解けたらまた一年に向けての準備が始まる。
どうしようもなくのどかで退屈で、穏やかで心地良い村だった。

若い俺はそれなりに人の仕事を手伝った。
腰の悪いジジババたちのために重いものを運んでやったり、畑仕事を手伝ったり。
だがあの老人共、若いのは遊ぶなりおでかけするなりすりゃええ、とか言って
強がりやがる。当然いう事を聞く気なんてなかったから無視したが。

春から秋にかけてそうして、冬は山の麓の街で日雇い労働をした。
人が少ないほど食べ盛りのガキに備蓄を多く回すことができるから。
幸い麓の街は働き口は多かったし、春になるまで時間を潰す場所も多かった。
酒場やら娼館やら。金なんて持って帰っても使う場所がないから、
日雇い労働で稼いだ金は宿代と酒代と女代で使い切っていた。






「悪くない生活だった。春から冬まで。」