RECORD

Eno.3 マイリーの記録

Dear Miley(7)

――その子供と両親は、ちゃんと互いに思い合えていた。
ただ、互いに見えているモノが違い、見るべきモノを間違えていただけだった。
決して分かり合えない訳では無く、きっと家族の愛を得る事が出来るハズだった。


突如現れたひとつ目の霊に子供の両親はパニックに陥っていた。
オレだってそうだ。今までオレの事が見えるのはその子供だけで、
ましてや見えなかった者が、突然見えるようになるなんて想像出来なかった。

『待ってくれ! オレは何もする気はないんだ!』

オレの声を聞き、二人の動揺はさらに大きくなる。
慌てて傍にあったカップを投げたり、銃を取りに行ったりと状況は悪化する一方だ。

投げられたカップがオレに触れる事は無かった。
その二人が見えるようになった所で、オレが霊である事実は変わりない。
物に干渉できる霊としてポルターガイストを起こすモノもいるが、アレは一定以上の力を持ち
何かモノに関する未練や、何かを伝えたいという未練の延長線で持つモノだ。
オレはそういった未練を持ち合わせていない。だからそのカップはオレを通り抜けていった。

「いたっ……」

小さな声が聞こえて、無いハズの心臓が跳ね上がるような感覚を覚える。
オレはその声の主を見る為に振り返った。

子供が額を抑えて下を向いている。
そのすぐ傍には先ほど投げられたカップが転がっていた。最悪だ。
オレは二人に声を掛ける際、少し前に進んだ。
ちょうど子供を後ろに隠してしまうような位置に……

慌てて距離を取る。上から見れば三角形になるような位置取り。
全てから遠ざかった。どうすればいいのか分からなかったから遠くへ。

銃を取りに行った者が戻って来た。
もう一人は近くにあったイスを持ってオレを見た後、子供の様子に気が付き青ざめた。
……異様な状況で先に行動したのは子供だった。

「マイリー、これしってる。がっこうの人がやっちゃダメって先生にいわれてたあそび」

「……いいよ? マイリーいたいけどこのあそびするよ?」

「だってパパもママもしてたし、マイリーが見えるならへいきだもん」

「ともだちが家にきたらいっしょにあそぶんでしょ? これってそういうことだよね?」

子供は顔を上げると笑顔を見せた。
その光景は酷く歪んでいて、とても哀しいものだった。
そして、子供は得たばかりの遊ぶ為の手段を力の限り行使した。
家の近くにいたモノから順にその手段は徐々に数を増やす。

子供が遊ぶ手段として用意したのは周囲一帯の霊を呼ぶこと。
正確には、霊に自分がされた事と同じ事をさせるというモノだった。