RECORD

Eno.28 柿原玄輝の記録

記憶

日差しが強い盆の中頃、昼下がり。
前日雨が降っていたせいか、凄まじく湿気が強い。
汗がべったりと肌に張り付く感覚は嫌いだ。
そんな日に墓参りなんてどうかしているが、良さそうな日が今日しか無かった。
仕方ないと割り切って、目的の場所まで歩く。

「……」

「……おや」


出会ってしまった。
金髪に銀縁青レンズのサングラス、特徴的な青い瞳。
モノクロのパーカーを着ている、軽そうな男。
ウォッカ。俺の数少ない仲間。

「奇遇だね」

「んな訳あるか、どうせ俺の予定全部把握してたんだろうがストーカー」

「やだなぁ、墓参りついでに仕事の話をしに来ただけじゃないか」


コイツはいつも、チャラけているような軽い口調で、他人の琴線に触れるようなことを言う。
今だって正直イラついている、が。
俺が今まで出会った中で、一番信用出来る人間でもあった。
大学生の時にはプライベートでもよくつるんでいたから、もう大体理解している。
態々この日を狙って接触してきたということは、本当に大事な話があるのだろう。
嘘つきが嫌いな癖に、回りくどいやり方を好むヤツだ。

「用件はコイツらへの挨拶・・・・・・・・が終わった後にしてくれ」

「最初からそつもりさ」


墓の前に向き直る。
花は片方の瓶にのみ添えられていた。己が持ってきた分は、もう片方の空いた瓶へ。
しゃがんで手を合わせる。お香の煙が散りゆく中、今は亡き仲間達への挨拶を済ませる。

……

暫く経ってから目を開けると同時に、隣の男が口を開く。

「彼等を失ったのでひとつ。俺達は、それに加えて幾度も何かを失ってきた。俺は4つ。君は2つ・・だ」

「……何が言いたい」

「目を逸らして寝ている場合じゃないよ、玄輝。
 今年は色々変わったからね。世界の変容に置いていかれないで」

「……恋人、師匠、家族で3つだろ。アイツらで4つ目だ。
 俺は家族とアイツらで2つ。1個多くて1個少ねぇな。
 ……何があった。何を知ってる」


辺りを沈黙が支配する。
墓の下で眠る元仲間たちも、今は静かに見守っていふように感じる。
この男は、何を言おうとしているんだ?

「何、ただのマインドセットさ。
 それより仕事の話だ──」


その後の話は確かに大事だった。
大きな仕事だ。でもそうじゃない。
お前は、俺の何を知っている?

……

仕事の話が終わった。
擦り合わせに思いのほか時間がかかって、今はもう夕暮れ時だ。
早くここを出ないと、呪術的にはあまりよろしくない。

「ということで、仕事の件はよろしくね。
 俺はもう少しここにいるから、先に帰っていいよ」