RECORD

Eno.61 ジュヘナザートの記録

話す必要の無い事。

 
当然、姉貴の存在は教会にとって都合が悪かった。
腐食するばかりが多いからと言って、殺人鬼を排出しただなんて事実が都合の良い訳がない。
増してや、被害人数が被害人数である上にアレが説く信仰救済は最悪のもの。
次代聖女に傷をつけた、と言う原初の経歴も相まって泥を塗られた所の話じゃあなかった。

犯した罪が多ければ多いほど、或いは大きければ大きい程に、加害者及びその縁者は追い込まれることになる。
それは例え法が機能しない無法地帯であっても大差はない。人の外聞に事実を元にした噂話、下馬評。


自分の立ち位置ばかり考えている輩は当然に焦ったし、色々な面倒事もあった。
責任問題とやらは無法地帯である事と姉が12の時に上から下町に追放済みと言う事もあって
有耶無耶、と言うか誰の手にも負えない段階になっていたとしか言いようが無い。
それでも幾らか以上の追及はあっただろうが、それはあたしに関係する話じゃあないし。

民衆が陳腐な救いを求める様に、聖職者にだって心労の捌け口が必要だった。
都合の良い存在が必要だった。



何をしても口答えの出来ない奴。

「姉貴によく似た顔は殴りつけるのに丁度良くて」
「"殺人鬼の縁者"ってのは非難する言い訳大義名分にもなった」


殺人鬼そのものに向けられないヘイトは此方に向いた。それは、そいつらにとって当然の事だったんだろう。
事実として『ジュヘナザート』の家名は忌み名になり、親は長女の非行を原因としてあたしに強く当たった。
立場、なんてのはハナから何処にもなく、居場所なんてのも存在はしていなかった。
何の意向か"教皇の子飼い"になってから直接的にどうこう、なんてのは減ったが今でも遠巻きに見られる事に変わりはない。

教会から出る選択肢はなかった。
無法土地であり、金と実力に暴力が優劣を定める都市において聖職者と言う職と盾を喪っては、外では長く生きられない。
何なら祈りの奇跡聖力を目当てにして奴隷になるのが一番マシなオチ。
そうじゃなくともこの顔と言うだけで妙な知名度があるから面倒事になるのは間違いが無く、
教皇の子飼いになった時点で、そう言う事だ。

生きているだけで罪を被る。
ありもしない罪を、被り続ける。


「こんな人生、クソったれだ」