RECORD
Eno.3 マイリーの記録
Dear Miley(8)
――きっと子供はオレの事を本当に友達だと思っているのだろう。
だからこそ、子供にはオレのような存在ではないモノと友達になって欲しい。
ちゃんと子供を見てくれる。そんな居場所を見つけて欲しい。
立派なレディになる所はきっと見る事は出来ないと思うが、そういう未来があると安心したい。
そうすればオレが貰っていい幸せ以上のモノを得て未練などは跡形もなくなるだろう。
子供に遊んで欲しいと強く思われたオレに、確かに植え付けられた明確な悪意が
現実となって子供に降りかかってしまう前に……
周囲の霊を集めた子供は恐らく無自覚にその力を振るっていた。
精一杯この遊びを楽しむという強い意志が霊に影響を及ぼしたのだろう。
「いろんな人きた……マイリーのあそびがしたいのかな?」
「いいよー! マイリーといっしょにパパとママとあそぼー!」
「……あ、でもマイリーのともだちとはまだあそんじゃダメだよ?」
「マイリーのともだちとはマイリーがあそぶんだから」
集まった霊達は部屋中をグルグルと回る。家がガタガタと音を立てて揺れている。
子供の両親は、オレと子供を交互に見るばかりで他の霊に気づいていない。
違う。見えていないんだ。この二人が見えるようになったのではなくて
オレの姿が見えるモノになったんだ。
子供の本当の力は霊を見るモノでは無い。
霊に頼み事が出来て、それを実行出来るであろう力を霊に与えるというモノ。
――現に、今のオレは“子供と遊びたい”という気持ちが芽生えている。
その考えを強く否定するとオレの中にあった“子供と遊びたい”という気持ちは薄れる。
これが他の霊達にも同様に行われたのだとしたら……
集まった霊達はそこら中の物を持ち上げ始める。
子供は小さなカップを持って楽しそうにそれを投げた。
カップは二人の方へと飛んで行くが、途中で力なく落ちた。
それを合図にして一斉に遊びを否定しなかった霊達は二人に向かってモノをぶつけ始めた。
照明カバー。皿。テーブル。カップ。本。ドア。包丁。イス。カーテン。
本棚。絵本。テレビ。皿。クッション。時計。小さなイス。銃。電子レンジ。
本。イス。花瓶。本。冷蔵庫。カップ。電球。本。鏡。皿。絵本。クッション。
オレが確認出来た物だけでその数だ。
実際にはもっと多くの物が玩具として使用されたハズだが、知りたくも無かった。
「マイリーの分がなくなっちゃった」
子供は物が一か所にまとめられた暗い部屋でそう言いながら笑った。
オレはそれを見ている時も、今でさえも子供にこの遊びをしたいという気持ちを抱き、
それを否定し続けた。否定する事をやめればきっとオレも同じ事を子供にしてしまうのだろう。
「パパ、ママ。たのしかった? マイリーはね、たのしかったよ!」
子供が見ているのは物が一か所にまとめられた場所ではなく、子供のすぐ隣。
……両親の霊がいる場所だった。この遊びの結果が、確かにそこに存在していた。
子供は楽しかったのかどうかを聞いた。両親はそれに答える事になった。
――たのしくなかったよ。
「……じゃあもういい。マイリーはともだちとあそぶからパパもママも居なくていい」
子供はひどく残念そうに“居なくていい”と言った。
二人の霊はそれを聞くと哀しい表情を浮かべながら、
子供をきちんと見てあげる事が出来なかった事を知り、否定できずに消えていった。
「つぎはともだちとあそぶ番! だけど、ちょっとつかれちゃった」
「すこしやすんだらあそぼうね!」
子供は転がっている壊れた小さなイスを運ぶと部屋の中央に座った。
脚が二か所折れたイス。霊によって支えられているイスに座って次の遊びを待ち遠しそうにしていた。
否定すれば断れるが、同調すれば抗う事が出来ない命令。
幽霊屋敷の御嬢様のお願いを聞いたり聞かなかったり、霊達はただ自由に飛び回るのであった。
だからこそ、子供にはオレのような存在ではないモノと友達になって欲しい。
ちゃんと子供を見てくれる。そんな居場所を見つけて欲しい。
立派なレディになる所はきっと見る事は出来ないと思うが、そういう未来があると安心したい。
そうすればオレが貰っていい幸せ以上のモノを得て未練などは跡形もなくなるだろう。
子供に遊んで欲しいと強く思われたオレに、確かに植え付けられた明確な悪意が
現実となって子供に降りかかってしまう前に……
周囲の霊を集めた子供は恐らく無自覚にその力を振るっていた。
精一杯この遊びを楽しむという強い意志が霊に影響を及ぼしたのだろう。
「いろんな人きた……マイリーのあそびがしたいのかな?」
「いいよー! マイリーといっしょにパパとママとあそぼー!」
「……あ、でもマイリーのともだちとはまだあそんじゃダメだよ?」
「マイリーのともだちとはマイリーがあそぶんだから」
集まった霊達は部屋中をグルグルと回る。家がガタガタと音を立てて揺れている。
子供の両親は、オレと子供を交互に見るばかりで他の霊に気づいていない。
違う。見えていないんだ。この二人が見えるようになったのではなくて
オレの姿が見えるモノになったんだ。
子供の本当の力は霊を見るモノでは無い。
霊に頼み事が出来て、それを実行出来るであろう力を霊に与えるというモノ。
――現に、今のオレは“子供と遊びたい”という気持ちが芽生えている。
その考えを強く否定するとオレの中にあった“子供と遊びたい”という気持ちは薄れる。
これが他の霊達にも同様に行われたのだとしたら……
集まった霊達はそこら中の物を持ち上げ始める。
子供は小さなカップを持って楽しそうにそれを投げた。
カップは二人の方へと飛んで行くが、途中で力なく落ちた。
それを合図にして一斉に遊びを否定しなかった霊達は二人に向かってモノをぶつけ始めた。
照明カバー。皿。テーブル。カップ。本。ドア。包丁。イス。カーテン。
本棚。絵本。テレビ。皿。クッション。時計。小さなイス。銃。電子レンジ。
本。イス。花瓶。本。冷蔵庫。カップ。電球。本。鏡。皿。絵本。クッション。
オレが確認出来た物だけでその数だ。
実際にはもっと多くの物が玩具として使用されたハズだが、知りたくも無かった。
「マイリーの分がなくなっちゃった」
子供は物が一か所にまとめられた暗い部屋でそう言いながら笑った。
オレはそれを見ている時も、今でさえも子供にこの遊びをしたいという気持ちを抱き、
それを否定し続けた。否定する事をやめればきっとオレも同じ事を子供にしてしまうのだろう。
「パパ、ママ。たのしかった? マイリーはね、たのしかったよ!」
子供が見ているのは物が一か所にまとめられた場所ではなく、子供のすぐ隣。
……両親の霊がいる場所だった。この遊びの結果が、確かにそこに存在していた。
子供は楽しかったのかどうかを聞いた。両親はそれに答える事になった。
――たのしくなかったよ。
「……じゃあもういい。マイリーはともだちとあそぶからパパもママも居なくていい」
子供はひどく残念そうに“居なくていい”と言った。
二人の霊はそれを聞くと哀しい表情を浮かべながら、
子供をきちんと見てあげる事が出来なかった事を知り、否定できずに消えていった。
「つぎはともだちとあそぶ番! だけど、ちょっとつかれちゃった」
「すこしやすんだらあそぼうね!」
子供は転がっている壊れた小さなイスを運ぶと部屋の中央に座った。
脚が二か所折れたイス。霊によって支えられているイスに座って次の遊びを待ち遠しそうにしていた。
否定すれば断れるが、同調すれば抗う事が出来ない命令。
幽霊屋敷の御嬢様のお願いを聞いたり聞かなかったり、霊達はただ自由に飛び回るのであった。