RECORD

Eno.516 マリウスの記録

微睡みの抱擁1

ヒュプイーズはよいこにひとつだけのおともだち

まるくてかわいいやわらかないのち

ヒュプイーズはおともだちがだいすき

うまれたときからあなただけがおともだち

ヒュプイーズはあなたにえらばれたい

まあるいカプセルのなかであなたをまってるの

ヒュプイーズこうじょうにおむかえにきて

ふたりでおうちにかえろうね






額を伝う汗に目を覚ませば、身の丈には大きすぎるタオルケットからもぞもぞと抜け出して跳ねるように洗面台にかけていく。

隙があれば流れ続けていたコマーシャルの音と映像は、否が応でもその頭に焼き付いて今でも微睡みの中へと苟も指を絡めさせる。

洗面台の排水口にキャップをして蛇口をひねり簡易的な浴槽にすると、じゃぶじゃぶと全身をすすいでいく。

若干酒気の残る口元に蛇口から流れる水をかぷかぷと含ませ飲み下す。

ふと、鏡に映るその姿を見やる。

愛らしい。

そう称されるものに属すような見目の命がこちらをにこにこと見つめていた。

忌々しい。

そう称すにふさわしい姿をねめつけることすらできずに。




ヒュプイーズはよいこにひとつだけのおともだち

けれど、これの傍らにあるのは小さな手記と得物だけだ。