RECORD
【配信切り抜き】大事なのは使い方さ【黄】

「や、諸君。アブシディだよ」

「そうだねぇ、己はラウンジでよくレモンを食している。
プリンやポテトチップスなんかも黄色いので食べるが……うん、黄色い飲み物と食べ物は多いんだよな」

「他の己に狡いなんて思われているよ」
~切り取り~

「さて、青い己から引き継いだ質問に取り掛かろうか」

「えーと……まとめると『物理的に違う個体が存在する以上、経験に差が出て来るのではないか』という質問だ。かなり多かったね」

「これはつまり、『結局お前ら別人じゃん』と言いたいのだと思う。
自己の連続性について問うてるのだろう?」

「答えが前回と似通ってしまうんだが、己達は“経験も含めて共有している”んだよ」

「例えば……歩いたことによる疲労感も共有する。
5人分の疲労を感じる訳だね。だから己達、戦闘技能は無いが体力はかなりあるんだ」
~切り取り~

「人間の体は電気信号で動いている。
つまり、経験は電気に変換することが可能なのさ」

「どんな経験も、電気という形に変えれば共有できる。
他者の脳に直接アプローチする形の共有手段は既にあってね。
己達は、それをリアルタイムで行っているだけだ」

「喉元過ぎれば熱さを忘れる……。
どんな経験も、記憶になってしまえば同じことだもの」

「……勿論。弊社もここまで至るのに、かなりの年月を要したよ」

「自己の連続性を維持しつつ、全てを共有する……当初は夢物語と言われていたが、とうとうこの技術の安定化に至ったというわけだ」

「己達はクローンだが、同時にデザイナーベビーでもあってね。
血管の配置構造や指紋なんかは後天的な要素が強いが、それらに差異が出ないように操作している。
己達の世界では人類史上初の試みでねぇ、世界中が己達に注目しているのさ」

「そう。同一である為に、今もこれからも様々な調整が必要なんだ」

「大変だけど、その分得られる経験は5倍さ。むしろ御釣りが出るよ」

「諸君も、思ったことはないかね?」

「1日の時間が倍になれば良いのに、とか。
自分がもう1人いれば、もっと色んなことができるのに、と」

「残念ながら、時の流れは平等だ。そこを変えることはできない。
しかし“たった1人の自分”であることは変えられる時代が来ているんだよ」

「弊社ならば、君のそんな願いを叶えることができる。
どうか是非、リアルタイム同期型クローンの作成をご検討頂きたいね」

「───充実した人生を約束するよ?」
………
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…