RECORD

Eno.131 (株)GENE26の記録

【配信切り抜き】大事なのは使い方さ【黄】

 

「や、諸君。アブシディだよ」


「そうだねぇ、己はラウンジでよくレモンを食している。
 プリンやポテトチップスなんかも黄色いので食べるが……うん、黄色い飲み物と食べ物は多いんだよな」


「他の己に狡いなんて思われているよ」



~切り取り~


「さて、青い己から引き継いだ質問に取り掛かろうか」


「えーと……まとめると『物理的に違う個体が存在する以上、経験に差が出て来るのではないか』という質問だ。かなり多かったね」


「これはつまり、『結局お前ら別人じゃん』と言いたいのだと思う。
 自己の連続性について問うてるのだろう?」


「答えが前回と似通ってしまうんだが、己達は“経験も含めて共有している”んだよ」


「例えば……歩いたことによる疲労感も共有する。
 5人分の疲労を感じる訳だね。だから己達、戦闘技能は無いが体力はかなりあるんだ」



~切り取り~


「人間の体は電気信号で動いている。
 つまり、経験は電気に変換することが可能なのさ」


「どんな経験も、電気という形に変えれば共有できる。
 他者の脳に直接アプローチする形の共有手段は既にあってね。
 己達は、それをリアルタイムで行っているだけだ」


「喉元過ぎれば熱さを忘れる……。
 どんな経験も、記憶になってしまえば同じことだもの」


「……勿論。弊社もここまで至るのに、かなりの年月を要したよ」


「自己の連続性を維持しつつ、全てを共有する……当初は夢物語と言われていたが、とうとうこの技術の安定化に至ったというわけだ」


「己達はクローンだが、同時にデザイナーベビーでもあってね。
 血管の配置構造や指紋なんかは後天的な要素が強いが、それらに差異が出ないように操作している。
 己達の世界では人類史上初の試みでねぇ、世界中が己達に注目しているのさ」


「そう。同一である為に、今もこれからも様々な調整が必要なんだ」


「大変だけど、その分得られる経験は5倍さ。むしろ御釣りが出るよ」





「諸君も、思ったことはないかね?」


1日の時間が倍になれば良いのに、とか。
 自分がもう1人いれば、もっと色んなことができるのに、と」


「残念ながら、時の流れは平等だ。そこを変えることはできない。
 しかし“たった1人の自分”であることは変えられる時代が来ているんだよ」


「弊社ならば、君のそんな願いを叶えることができる。
 どうか是非、リアルタイム同期型クローンの作成をご検討頂きたいね」


「───充実した人生を約束するよ?」


………
……