RECORD

Eno.163 惨禍の記録

迷宮(講師:カリン・マリン

迷宮ダンジョン

初めに。
私は君達に迷宮について教えるが、私は迷宮というものがどういう成り立ちで、どういうふうに作られ、どういう形と魔物の頒布があり、弱点はどうだ、という事を教えるのではない。
君たちが迷宮に食われないために、迷宮で身を守る基礎知識を授けるだけだ。
君たちの何人かはどこかの迷宮で命を落とし、帰らぬ人となるだろう。
それが誰かは分からない。
どれだけ成績が優秀でも理不尽ファンブルは常に愛想のいいものだ。
故に、私の講義で採点が良かったからと言って自惚れないように。
こんなものは迷宮の浅瀬に過ぎないのだから。

さて。
迷宮というものは何か?
事の始まりは予兆のない噴火のようなものだったという。
かつてこの世界は『只人ヒューマン』のみで構成され、196の国があったという。地上に人のいない場所はおらず、星の80%は78.88億人の只人ヒューマンの生活圏まで開拓されていた。
しかし517年前。
それは突然現れた迷宮によって爆破され、淘汰され、多くの只人ヒューマンは命を落とすこととなる。
ある迷宮は地下に、ある迷宮はビルに、ある迷宮は世界遺産に、ある迷宮はどこにでもある民家に───そこにあった動植物を一気に変化させ、飲み込み、当時の兵器では歯が立たない怪物として仕立て上げ、人類を追い立てた。

迷宮の正体はいまだに判明していない───、と、いうのも、あまりにも迷宮は我々の先祖の理解を越えた作りと法則によって動いていたからだ。
そしてそれを調べるには、彼らにはあまりにも余裕がなかった。
当時の只人ヒューマンでは戦える者は基本的に希少だった。戦闘は物理から概念、経済的なものに変わりゆき、情報戦で戦い続けていた彼らにとって、あまりにも原始的で暴力的な自然とも呼べぬ異物に対抗するのは難しい事だったのだ。
人類の文明と数の後退は一気に中世まで下がった……逆に言えばそこで踏みとどまったとも考えられる。
何人かの無謀な若者が繰り返し小さなダンジョンに挑むことによって、迷宮の理に馴染む・・・のに成功した事から人類が迷宮からあふれた魔物たちの間引きを少しずつ成功させることに成功したからだ。
この馴染む、という言葉をレベルアップと定義している。
これは過去の娯楽用品から取られた概念だ。迷宮に馴染むことによって、身体能力の向上や超能力、魔法の獲得が可能になったことが明らかにされたのが名づけの理由とされているな。


迷宮は様々な悪意を人類に向けたが、同じほどに恩恵も落とした。
レベルアップもそうだが、食事や素材などが主になる。
一度世界というものが破壊されかけた事から、電気や石油など、大きなエネルギーを生む施設や産出される地区は只人だけでなく亜人とも取り合いになっているからな。
それに代わる供給源が迷宮はなった、と考えたらいい。
迷宮はいまやこの世界から切っても切れぬ縁で繋がれてしまった。なら、賢く使ってやろう、というのは健全な発想だろう。

しかし、迷宮でのレベルアップは他に問題も生んだ。
亜人問題デミ・トラブルなどが、そこの発端だろう。