RECORD
Eno.493 ---の記録
馬子にも衣装、躾直し
「服を汚すなよ。相手の返り血ならいいけど。」
ハチは頷いた。
「それから、戦いは真面目に。礼儀正しく。」
少し考え、頷く。
「なんだか昨日から無口だけどどうした?」
首を傾げ、どう説明したら良いか思案。
喋れないのだから口を開いたって仕方ないのだ。
『いぬのままか』
己の奇声を聞くたびに、あの男の言葉が浮かんではジリジリと脳を焼いていく。
綺麗な服を着て、口を閉じて、礼儀正しくしていれば、せめて闘技場の中だけでは"人間"に見えるだろうか?
そんな悪あがきで、今日も声を殺した。
・
これまで、ネックレスを何人かに見せたが、その誰もが、そこに書かれている文字をハチの本名ではないかと推測してくれた。
ソレを見せて回っていたのは、「自分のことを知っているか?」と聞きたかったからでもある。
その名を呼ばれればザワザワとした感情が蘇ってくるが、それは心を乱すだけ乱してすぐに沈んで明瞭な姿を現さない。
名前を、人間性ごと忘れている。
もしかしたら、心臓も握られているかもしれない。
ハチはまだそこまで知恵が回っていないが、本能的な恐怖はここからくるものだった。
ハッキリと気付いたところで何もできないが。
ハチは頷いた。
「それから、戦いは真面目に。礼儀正しく。」
少し考え、頷く。
「なんだか昨日から無口だけどどうした?」
首を傾げ、どう説明したら良いか思案。
喋れないのだから口を開いたって仕方ないのだ。
『いぬのままか』
己の奇声を聞くたびに、あの男の言葉が浮かんではジリジリと脳を焼いていく。
綺麗な服を着て、口を閉じて、礼儀正しくしていれば、せめて闘技場の中だけでは"人間"に見えるだろうか?
そんな悪あがきで、今日も声を殺した。
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これまで、ネックレスを何人かに見せたが、その誰もが、そこに書かれている文字をハチの本名ではないかと推測してくれた。
ソレを見せて回っていたのは、「自分のことを知っているか?」と聞きたかったからでもある。
その名を呼ばれればザワザワとした感情が蘇ってくるが、それは心を乱すだけ乱してすぐに沈んで明瞭な姿を現さない。
名前を、人間性ごと忘れている。
もしかしたら、心臓も握られているかもしれない。
ハチはまだそこまで知恵が回っていないが、本能的な恐怖はここからくるものだった。
ハッキリと気付いたところで何もできないが。